【IMPRESSION】 ACTIVE Z900RS(2020)

【IMPRESSION】 ACTIVE Z900RS(2020)

Z900RSのカスタムには、昔ながらの雰囲気を追求する人がいれば、ツーリングでの快適性を重視する人もいるなど、いろいろな方法がある。アクティブによるデモ車のコンセプトは「スポーツネイキッドとしての運動性能を高めること」。Z900RSで峠道やサーキットを存分に楽しみたいライダーにとって、この車両に反映された手法は大いに参考になるはずだ。

取材協力:アクティブ TEL0561-72-7011 〒470-0117 愛知県日進市藤塚7丁目55番地 http://www.acv.co.jp/
Report:中村友彦/Photos:富樫秀明


ノーマルと比べると車格感が格段に小さいZ900RS

ノーマルで十分に楽しいけれど、実際にノーマルでいろいろな状況を走ると、カスタムの意欲が湧いてくる。Z900RSのそういった素性は、かつての空冷Z系やGPZ900R、ゼファー、ZRXシリーズに通じる要素だと思う。そしてこれまでのカワサキの名車と同じく、Z900RSカスタムの方向性はまさに百花繚乱で、全国のショップやパーツメーカーが、独創性に富んだモディファイを行っている。

では、2018年初頭からZ900RSのデモ車製作に着手したアクティブが、2020年の年末までにどんなモディファイを行ってきたかというと、当初のコンセプトは“オーナーが現実的に描けるストリートカスタム”。それが2019年には“理想的なスポーツネイキッド”に進化し、峠道でコントロールに集中できる、乗り手とマシンの一体感を念頭に置いて、各部に手を加える。

そしてこの時点でひとまずの完成形に至った姿は、なかなかスパルタンな雰囲気で、人によってはその方向性に疑問を抱くかもしれない。そのようにノーマルとは一線を画するコンパクト感を実現しつつも、ノーマルの万能性を犠牲にすることなく、運動性にきっちり磨きをかけたアクティブ車は、スポーツライディングの楽しさという点で、Z900RSの潜在能力を見事に引き出していたのだ。

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まずはライディングポジションの印象から書こう。セパレートタイプのハンドルとバックステップ、ノーマル+20mm高となるCAFE用シートを装着したアクティブ車で興味深いのは、スポーツするための準備が整っていることと、車格感がノーマルより格段に小さくなっていること。逆に言うなら、ノーマルのような大らかさはないのだが、だからと言って市街地やツーリングが厳しい乗車姿勢ではないし、車格感の小ささはマシンが手の内に入っている感覚、乗り手にとっての自信につながる。

なお後方へ35mm/上方へ35mm移動したステップは、荷重・抜重に対する反応が素晴らしく良好(位置に加えて、切削加工が施されたバーとブーツのソールの食い付き、ヒールプレートのホールド感も絶妙)で、この感触も車格感の小ささに貢献しているようだ。

続いては大幅変更された足まわりの話で、やんちゃ、あるいは大雑把と言いたくなるノーマルと比較すると、アクティブ車の挙動は上質で明確。ノーマルでは今ひとつの乗り心地は、前後ショックの変更で劇的に改善され、路面の凹凸を軽やかにいなしていける。そしてノーマルでは微妙なコントロールが行いづらいフロントブレーキは、ステムやフォークスプリング、マスターシリンダー、ディスクなどの変更が奏功しているようで、急激な姿勢変化を心配することなく、どんな状況でも任意の制動力を確実かつ気軽に引き出せる。

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もちろん、前後ホイールの軽量化とフォークオフセットを34 →31.5mmに変更したことによる、車体の軽快で実直な動きも、アクティブ車を語る上では欠かせない要素で、ライン取りは自由自在。バーハンドル車をセパハンに変更すると、場合によっては低速域で重さを感じることがあるのだが、そういう感じは微塵もなかった。

 

コーナーの立ち上がりが待ち遠しくなる特性

それら以上にこのバイクで特筆すべき要素は、コーナーの立ち上がりにおける、トラクションと爽快感だろう。もちろんそれを味わうためには、進入~旋回を上手く決める必要があるのだが、アクティブ車に乗っていると、やっぱりスポーツライディングの醍醐味は、コーナーの立ち上がりじゃないかという気がして来る。

と言っても、マシンがバンクした状態でスロットルを開けると、ドライブチェーンの上側が張り、スイングアームとリヤショックが後輪を路面に押し付け、トラクションが生まれる……という流れは、どんなバイクにも通じる話だ。でもアクティブ車はトラクションがとてつもなく濃厚だから、乗り手はそれを頼りにして、さらに大きくスロットルを開けられるのだ。

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しかもスイングアームとリヤショックは柔軟な設定なので、路面に凹凸があっても車体の挙動は乱れないし、少しくらいリヤタイヤがアウトに流れても、その動きに恐怖を感じることなく、右手に力が込められる。さらに言うなら、マシンを徐々に起こしつつ加速態勢に入るときに、アウトに膨らむ気配がないことや、ノーマルで感じたドン着きが緩和されていること(これはマフラーに加えて、ライディングポジションと車体姿勢の変更も大きく影響しているはず。アップライトなノーマルは、ドン着きを感じやすい)も、スロットルを大きく開けられる一因だ。

いずれにしてもアクティブ車は、ノーマルより格段にスロットルが開けやすく、前述したように、車格感の小ささや乗り心地、フロントブレーキのコントロール性、ライン取りの自由度などでも、ノーマルを上回っている。

そうではあってもノーマルはノーマルで楽しいのだが、すでにある程度の距離を走ったZ900RSオーナーがアクティブのデモ車に乗ったら、あまりの乗り味の違い、と言うか、自身の愛車の潜在能力に、驚くのではないだろうか。

 

ACTIVE・Z900RS Detailed Description【詳細説明】

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FRP製ビキニカウルやセパレートハンドル+インナーウェイト、スロットルホルダーはアクティブのオリジナル製品。ブレーキマスターとクラッチレバー+ホルダーはゲイルスピード。

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バーエンドミラーはデイトナCONERO。

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外装類のペイントはALFATECが担当。タンクキャップ外周に備わるのは、SWMOTECHのタンクバッグ用アダプター。

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車体後部にはアクティブのテールレンズ延長キットとフェンダーレスキットを装着。シートはZ900RS CAFE用を装着。

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シリンダー側面にはバフ仕上げのアルミサブフレーム、クランクケース左右カバーにはアルミ+ポリアセタール樹脂のスライダーを装着。

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フォークスプリングとリヤショックは、アクティブが日本仕様の設定を担当するハイパープロ。

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チタン・スリップオンマフラーはアクラポビッチ。JMCA適合品でありながら、ノーマルとは一線を画する重厚な排気音と軽快な吹け上がりが満喫できる。

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コンバーチブルステムキット(フォークオフセットは31.5/34mmの可変式。ノーマルは34mm)とプレスフォーミングスイングアームは、アクティブがスポーツネイキッド用として積極的に展開しているパーツ。抜群の剛性を誇る前者はブレーキング時の安定感に、適度なしなやかさを感じる後者はコーナー後半のスロットルの開けやすさに大いに寄与する。

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バックステップは4ポジションで、ノーマルに対するバック/アップ寸法は、23/33、23/45、35/33、35/45mmだ。

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3.50-17/5.50-17サイズのアルミ鍛造ホイール、フロントのφ320㎜クロスロックディスクローター、リヤのラジアルマウントキャリパーはゲイルスピード。

※本企画はHeritage&Legends 2020年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

中村友彦

二輪雑誌編集部員を経て独立し、現在フリーのモータージャーナリストとして活動中。クラシックバイクから最新モデルまでジャンルや新旧を問わず乗りこなし解説する。カスタムやレースにも深く興味を持ち、サンデーレースにも参戦する。