人間はひとりでは生きていけない。それは世界中の誰もが知っている名言だが、レースをやっていると、本当にそうだよなあ……と、しみじみ感じることが多い。何と言っても、連載開始時にはサーキット経験豊富とはいえなかった僕が、4年以上に渡ってヤマハTZR250(1KT)でのレース活動を楽しめているのは、いろいろな面でサポートしてくれる友人知人、そしてチューニングの手助けをしてくれるショップ/パーツメーカーのおかげなのだから。
中でも、当連載で最もお世話になっているのが、全国の2スト好きから絶大な支持を集めているクオリティーワークスだ。同店がこの企画に関与するようになったきっかけは、2015年4月に筑波サーキットに練習走行に出かけた僕が、ピットで代表の山下さんに偶然遭遇したこと。そこでリヤショックに関する相談を持ちかけ、以後はズルズルと(?)相談範囲を拡大していき、結果的にエンジンから車体、ライディングテクニックに至るまで、ありとあらゆる面倒をクオリティーワークスに見てもらうことになったのである。
そして面倒を見てもらっていると言えば、内燃機加工店の井上ボーリングと、ショックメーカーのナイトロンジャパン/テクニクスも、僕と1KTのレベルアップには欠かせないショップだ。度重なるピストン+シリンダーの焼きつきが克服できたのは、井上ボーリングが開発したICBM、アルミメッキスリーブのおかげだし、今から30年以上前に生まれた1KTでサーキットをガンガン攻められるのは、しなやかかつ上質な動きを実現する、ナイトロン/テクニクスのショックユニットのおかげである。
もちろん、そのほかにも1KTを走らせ続ける上でお世話になっているショップ/パーツメーカーは多々あるけれど、とりあえず今の僕は、クオリティーワークス、井上ボーリング、ナイトロン/テクニクスが店舗を構える埼玉方面には、一生足を向けて寝られない……と感じているのだ。
当初はなし崩し的な依頼だったにも関わらず、結果的に4年以上に渡って、僕の1KTの面倒を見てくれているクオリティーワークスの皆さん。左が代表の山下さん、中央が安藤さん、右が村井さんで、全員が’70~90年代の2ストローク車全般に精通している。
ICBMの投入だけではなく、クランク+コンロッドのオーバーホールやシリンダーヘッドの面研など、井上ボーリングにはあらゆる内燃機加工でお世話になっている。右が代表の井上さんで、中央は昨年引退した家泉さん。左はレーサーとしての経験も豊富な小林さん。
度重なるピストン+シリンダーの焼きつきに悩んでいた僕にとって、井上ボーリングのICBMは救世主と言うべき存在になった。純正の鋳鉄スリーブに替えて、2017年春にこのアルミめっきスリーブを導入してから、焼きつきには一度も遭遇していない。
当初はNSR250Rの純正を使っていたリヤショックは、2016年夏からナイトロンのR3レースシリーズに換装している。僕の使用状況を考慮したうえで、バネレートとダンパー特性を設定してくれたのは、多種多様なショックユニットを熟知している同社の金子さんだ。
才谷屋の3MA用フェアリングと’87年型TZ250用シートカウルを採用したことで、当初と比べるとレーサー的な雰囲気が濃厚になった現在の僕の1KT。実際はフルカウルなのだけれど、装着するチャンバーとの干渉を鑑み、テープ部分でカットして、僕の1KTはハーフカウル仕様としている。ラジアルタイヤの装着を前提とした前後ホイールは3MA/2XT用で、ブレーキパーツにはサンスター/ZCOO/HELを使用。ドライブチェーンはRK520TRUで、クロモリ製の前後アクスルはP.E.O.。キャブはミクニTMX32、チャンバーはSP忠男、点火コイルはASウオタニを選択した。