ショップ・アゲインのTOT参戦!足まわりはYSSがサポート
老舗ショップと新興サスの総合力が勝利の裏付け
大阪のアゲインといえば、ヨンフォアやZを主軸としたカスタムやメンテナンスで、古くから両車ファンには知られたショップ。設立は1990年、いわゆるカスタムブームの黎明期にまで遡る。以来、先の2車種に関してはブレなくサービスを提供してきた。
▲1990年代中盤のカスタムブームの頃から、CB400Fourを軸としたレストア&カスタムショップとして知られたアゲイン。今も「ヨンフォアとZ、キャブ車しかやらないよ」と、松永代表が言い切るほど。その松永さんもTOTのZERO-2クラスにヨンフォアで参戦、直近では2018年春秋でともに決勝2位、2019年春は3位の戦績も残す。
一方、H&L読者にはお馴染みだろうYSSは、タイのサスペンションメーカー。日本へは淡路島に本拠を構えるYSS JAPAN(PMC)が輸入発売元として、そのネットワークを広げてきた。 そんな2社がダブルネームでチームを組んでTOT(テイスト・オブ・ツクバ)に取り組み始めたのは2017年秋のこと(アゲイン自体、そしてここで紹介の田中信次、伊藤大三両選手は、もちろんそれ以前からTOTへは参戦を続けてきた)。YSSサスが本格的にTOTエントラントへの商品展開とサービスを開始、パドックで話題となったのも、この年からだった。
そして2021年11月のKAGURA-DUKI STAGEで、『YSSレーシング&アゲイン』は、モンスターエボリューションで田中信次選手+Z1000Jが、ドーバー1では伊藤大三選手+CB500Fourがそれぞれ優勝。TOTで最近は滅多に見られない、1チーム2クラス制覇を達成したのだ。しかもモンエボでのZの優勝は2018年SATSUKI STAGE(佐伯真吾選手+Z1-R)以来、ドーバー1でのCBブランドの優勝はTOT始まって以来というオマケ付き。ここではそんな2車に注目したい。
▲MONSTER Evo.クラス優勝。#52 Z1000J田中信次選手。
まずは田中信次選手のZ1000Jから見ていこう。現在のエンジンは’20年シーズンから使用中の、GPz1100用ベースにアニーズ製のゼファー1100用φ78㎜を加工流用しての1261㏄仕様エンジンを組んだのは、グランドベースの丸尾慶仁さん(丸尾さん自身もZ1000LTDベースのレーサーでモンエボ参戦も、今回は残念ながらトラブルでリタイヤ)で、GPZヘッドの燃焼室形状に合わせたリセス加工等も含め、すべての作業を担当した。「松永さんとテーマにしたのは150㎰の獲得。初めて使うピストンでしたから、安全マージンを取って組んで147㎰」(丸尾さん)。
これをライドした田中選手は、「2021年SATSUKI STAGEまでに手応えも得て(ベストタイム:1分1秒112)、今回もセットアップが進んだこのマシンで0.2秒、ライダー側で0.3秒は詰まるなって考えていました。今回のベストは予選の0秒959と、少し目標に届きませんでしたが、まだ詰まる。でも一方で大事にしているのはベストラップよりは決勝レース12周を走り切ってのトータルタイム。コンスタントに0秒台が出るようになれば、クラスレコードの0秒153(2009年。上田 隆仁選手+CB1100Rが記録)も狙えるかな」と。
「期待するエンジンパワーが獲得できて、次にやるべきシャシー側の作業も見えてきました。マシンはまだまだ進化していきますよ」とは、アゲイン・松永さんの弁だ。
今のモンエボクラスを席巻、同じ空冷4発でもより高出力が期待できるXJR勢を相手に、トータルパッケージでの勝負を挑んでいく。
▲D.O.B.A.R-1クラス優勝。#10 CB500F伊藤大三選手。
そしてもう一台。伊藤大三選手のCB500Fourに目を移そう。伊藤選手といえば、これまでCB350Fourを駆ってドーバー2を走り続けてきたライダーだが、2021年SATSUKI STAGEの決勝でのクラスレコード(1分7秒511)樹立を機に卒業。今回からはCB500Fourに乗り換えてドーバー1に移り、その初戦で優勝。
「500Fourは短期間でまず走れるようにした状態。これから各所に手を入れていきたいと考えているところです」(伊藤選手)。
外観とカラーリングで、故・隅谷守男選手が駆ったCB500改を彷彿させる同車が、アゲインの手でどう仕上げられるか、進化が楽しみだ。そして、やはり気になるのは両車に装備される、YSS製サスペンションの評価。
「Zに装着するフロントフォーク(影武者 クローズド・カートリッジ・ガスフォーク)は、レース実戦ではウチが一番最初に装着したんじゃないかな。剛性感はこれまで使った他社製品よりも高かったですよ。エンジンパワーと田中選手のライドに合わせたセッティングは完了済みです。
YSSは、TOTの現場にもサービス対応に来てくれるから安心。リヤショックを含めて、細かなリクエストにも応えてくれるのがいいですね。各部シール類のライフも安定的で、YSS本社でも開発を進めて逐次、アップデートしていると聞きます。YSS JAPANに依頼するオーバーホールも年1回のサイクルで済んでいますよ」(松永さん)。
ここで紹介のZやCBを筆頭に、TOTを舞台に活躍する人気車種群を広く網羅するYSSサスペンション。レースの現場で得た声やノウハウは常に製品にフィードバック、より良い製品作りに活かされているのだ。
MONSTER Evo.#52 Z1000J
ビッグパワーのXJR勢に負けないパッケージ力! 田中選手がZ1000Jでモンエボクラスを走り始めたのは20 15年秋から。以来、約6年をかけ熟成した今の姿だ。エンジンはアニーズφ78mmピストンで1261cc化。FCRφ39mmキャブとアサヒナレーシング製チタンフルEXの組み合わせ。オイルクーラーはステーを介してゼッケン下に設置する。φ43mm YSSフォークのクランプに、ステムまわりはZRX1200純正パーツを流用、前後ホイールはXJR1200用(F:3.50-17、R:5.50-17)でリヤスイングアームもXJR用。フレーム側と、同スイングアーム側リヤショックマウント位置はそのまま流用し、前後17インチ仕様ディメンション向けに、YSSにZ用をベースにショック長調整を依頼、装着している。
D.O.B.A.R-1 #10 CB500F
初参戦、優勝もブラッシュアップはこれからだ。Z650勢強し、の印象だったDOBAR-1クラスに参戦、見事に優勝をさらった伊藤選手のCB500Four。実は前オーナーが長く保管していたものを譲り受け、今回のTOTに向けて「まず、走れる状態にしたので精一杯」(松永さん)ゆえ、エンジンも問題なくかかることを確認した程度で詳細はまだ不明とか。合わせたYSSサスはフロントのSR400用φ35mmフォークに合わせアップグレードキットを、リヤはCB400Four用をベースに、ショック長を調整している。前後ホイールはCB400SF用で3.00-17/4.00-17。上記、田中Zも同様に、YSSならオーダーに合わせたショック長やバネレート変更も自在に応じてもらえる。
ブラッシュアップにも最適YSSサスペンションシリーズ
下2点がZ1000Jで使うKG308S影武者フォークと、SII362リヤショック。KG308Sは嵌合長を長く取り倒立フォークに迫る剛性を実現。インナーチューブはDLC仕上げ。圧側高・低速各30段、伸び側30段の減衰調整と、最大15mmのプリロード調整可。SII362はリザーブタンク位置を360度調整可能な最高峰ツインショック。圧側高・低速各30段、伸び側30段の減衰調整、無段階プリロード調整、+10mmまでの車高調整機能付き。
フロントフォークKG308S 影武者。41万8000円。
アジャスタブルフリーアングルリザーブタンク付きリヤショック SII362。17万6000円。
以下2点はCB500Fourの、フォークアップグレードキット(FUK)とZ362リヤショック。FUKは伊藤車のSRフォーク流用に合わせて同車用をインストール。イニシャルアジャスター機能が追加できる。Z362はオーセンティックな外観に、伸び側30段の減衰調整、無段階プリロード調整、+10㎜までの車高調整機能を持つ本格派だ。
フォークアップグレードキットヤマハSR用。3万7400円。
オールラウンドリヤショックZ362。7万1500円。
※本企画はHeritage&Legends 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
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