販売店からの視点で見る中古バイク購入のポイント 前編
バイクの使えば減る部分はどうなっているか
バイク界では毎月のように新型車が出てくる。当然ながら買い換えにもつながって、中古車も同じように出てくることになる。その中古車はリーズナブルさや手軽さでも重宝される。例えばカワサキのZなど、新車当時は費用や年齢などいろいろな事情で手に入れられなかったけれど、それがいよいよ出来るようになった……など、選ぶ理由にもいろいろとある。
そこで頼られるのは、中古車の販売店だ。ユーザーのニーズに合った車両を揃え、販売する。その時に中古車は仕入れが必要となるわけだが、ここにはプロならではの目がある。今回、そのプロとして話を聞くのは、レッドモーターだ。同店はバイクの各種修理や整備車検、カスタム等と並んで、中古車販売も主業務。店頭には原付や250ccから大型車まで、値頃感もあってちょっと乗ってみたいなと思うような車両が並べらている。
「大型車で言うとレア車が多いですね。タマ数は少ないんですが、需要はあるというようなものです」と、同店代表の中村圭志さん。
▲中村圭志さんは中古の目利きを行うだけでなく整備や修理にも腕を奮う。全日本ドラッグレースでは7度のチャンピオンも獲得している。
中村さんはJD-STERドラッグレースの主催者のひとりで、同店で買った車両を街乗りに使いながらJD-STERにも参戦するというお客さんもいる。
「中古車両、特に年月の経った車両に言える全体的な特徴としては皆さんも知っての通り、純正パーツがない(終了した)ものが多いこと。そして走行距離もそこそこ行っている。2~4万kmは普通です。でも5万km走っていても大丈夫という車両もありますから、そこは個別に見分けて仕入れます。 エンジンをかけてみたりあちこち動かして見分ける部分もあるんですが、それは後でお話するとして、実際に車両を出して、順に見ていきましょうか」
こう言って、販売車両として入庫しているカワサキZR-7を持ち出してくれた。ZR-7はZ650系カワサキ空冷2バルブ直4エンジンのネイキッドだ。確かにレア。でもそそられる1台。
「まずは走行距離を見ておきます。改ざんされている車両も多いんですけど、この車両だと4万6000km。これを頭に入れて、ほかの部分と比べていきます。
ハンドルグリップやステップゴムの減り。パターンがなかったり減っていれば“乗りこんでるなあ”と判断できる部分です。同様にドライブチェーン、ブレーキパッド。パッドは距離が出てなくてもハードにかけていれば減りが進んだものも見られます。
それからタイヤ。減ってなければいいかな……と思いがちですけど、溝はあっても古い! というのが多いんですよ。2~3年どころでなくて5~6年経ったようなのも多く見ます。ヒビ割れがないから、と思ってもそんなタイヤはグリップはしませんよね。そうなると危ないですし、そのバイクにまったく手が入れられてないと分かります。製造日マークも見て確認します。ここは中古車だけでなく普段乗ってるバイクも同じですから、ぜひ注意しておいてほしいと思います。
外装では古い車両の燃料タンク。キャップを開けてサビを確認します。この時、開けて見える下側を皆さん見られるかと思いますが、そこにサビがなくても上面(タンクキャップの付いている側)にサビがあることが多いんです。なかなか見えないですけど、満タンでない状態で保管していると残った空間の上側からやられる。
フロントフェンダーも結構見ます。年式が古いのに妙に新しいなあという時は交換されていることが多い。事故車の可能性も出てきます。もうちょっと深掘りするためにフェンダー裏を触ってみたりもします。走っているものは泥が乾いていたり、それなりに汚れてます。 どれも乗っているうち、時間が経つうちに減る部分ですから、その状態。先ほど言ったタイヤやチェーン、それにバッテリーは消耗品ですから、そんな消耗品がちゃんと換えられているかという履歴も分かればいい。正しく手が入っていればなおよしです」
ここは見ておきたい中古車ポイント
1.メーター(走行距離と針の振れ)
まずはメーター(走行距離)だが、改ざんされているものもあるので、鵜呑みにはしない。メーターまわりとしては特に古いモデルでのメーターワイヤの油切れやワイヤの切れ/ほつれ、針のゼンマイ不良による作動不良にも注目しておきたい。
2.ハンドルグリップ(ラバーの減り)
ハンドルのグリップゴムは常に握られている箇所だから距離が進めば減る。
3.ステップ(ステップラバーの減り)
ステップのゴムも同じ。刻まれたパターンがないだけでなく、明らかに減っているものも結構ある。
4.燃料タンク(外観&内部)
燃料タンクは外観もだが、後々を考えると内部のサビもチェック。右のようにキャップを開けて見える部分よりも上面裏側が要注意で、中村さんは鏡でも確認する。内部コーティング処理車は処理剤の剥がれが出ると困ることが多い。
5.フロントフェンダー
フロントフェンダーは意外な情報が出る箇所。年式の割に妙に新しい場合は交換されていることを疑ってみる。事故車だから……の可能性もあるからだ。裏側まで触ればより深く分かる。
6.エンジン(外観と音)
エンジンまわりは静止状態では外観の確認程度しかできないが、それでもひと通り見ておこう。エンジンがかけられるなら良否の判断材料が増える(後編にて詳細をお伝えします)。
7.キャブレター(内部の摩耗)
8.キャブレターインシュレーター
キャブレターも静止状態で分かることは少ないが、この状態での各部ホースの劣化やインシュレーター(ゴム)にひびが入っていないか(あれば2次空気を吸って不調になる)を確認する。
9.バッテリー
外からは見えにくいが、バッテリーも消耗品のひとつとして確認しておきたい部分。このようにテスターで測れるなら電圧もチェック(ここでは12.4Vを記録してOK)しておきたい。
10.ドライブチェーン
ドライブチェーンも消耗品。たるみが大過ぎないか、固着やヘタリはどうかを確認する。スプロケットも消耗して尖ってくるから、合わせて確認したい。
11.タイヤ(全体の減りや製造日)
中村さんが中古だけでなく一番気をつけてほしいと言うのはタイヤ。ひびがないのは当然として、製造年月日が新しいこと。タイヤサイドに表示(メーカーごとに一部異なる)されているから確認。ここではダンロップ・ロードスポーツを履き、「X2919」の表示から「2019年(後ろ2桁で表示)の29週目(前2桁)製造で新しいと分かる。
→後編へ続く
※本企画はHeritage&Legends 2020年11月号に掲載されたものです。
販売店からの視点で見る中古バイク購入のポイント 後編はコチラから
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