タイヤの使い方の違いも各部数値に反映される
すっきりした印象のカワサキZ1。ACサンクチュアリーによるコンプリートカスタム、RCMの1台(シリアルナンバーは538)だが、いつもの17でなく、18インチホイール仕様だ。
「18インチ仕様も最近増えた印象です。それで当店のスカルプチャー・ステムの18インチ対応品もいったん廃番化していたものを、復刻することになりました。スカルプチャー・パーツはRCMを作るためのパーツとして設計し、そのディメンションや質を自分の車両にも生かしたいという方向けにも販売しています。それを復刻ということは、当店だけでなく、それだけのニーズが市場にあるということです」と、サンクチュアリー・中村さん。車両自体はRCMクォリティで仕立てられているのだが、前後18インチでは、どんな点が17インチ仕様と違うのだろう。
「これは私としてもずっと比較論的に考えてきたことです。最初、自分のZ1-Rをカスタムした時は18インチだったんですよ。PVMのホイールを履かせて、いくつも18インチ仕様車も作って。17インチが前に出てきたのが1990年代後半。レースの影響で17インチカスタムに目覚めて、両仕様の違いを知りたかったし、追ってきました。細かい部分も含めたサイズ感やディメンション作りはずいぶん勉強になりました。
具体的に言えば、17インチは小径になりますから車高が下がり過ぎないように。切れ込んだり、鈍くなったりしないようにトレール量も正しく調整しないといけないですし、タイヤをつぶしてトラクションさせるのに適したスイングアーム長、太いフォークをクリアするワイドスパンなステムなどが要ります。
18インチの場合は車高を適度に抑えて、タイヤも潰す方向でなく転がす方向で、スイングアームもノーマル長に近く、フォークスパンもKYBφ38mmフロントフォークの細身に合わせたノーマル185mm…という風になります。
17インチをたくさん経験したことで、逆説的に18インチの芯も見えて、当初作っていたものがここにきてより洗練された感じです」
RCM以前から手がけてきたノウハウは、17インチ・カスタムのノウハウと比較することでより明確化して、最新の車両作りにも生かされているのだ。
Detailed Description詳細説明
18インチ仕様らしいすっきりとした作り。ヘッドライトやウインカーもノーマルデザインを優先。左右マスターシリンダーはブレンボRCSとする。
メーターはノーマルベースでステアリングステムはフォークオフセット[純正値:60→]45mm、フォークスパンは185mm(ノーマルと同じ)のスカルプチャーφ38ステムキットTYPE-1で、ハンドルバーはPOSHスーパーローを装着。ブレーキ/クラッチラインはアレーグリ・ショルトシステム・ステンレスメッシュを使う。
シートはデイトナRCMコンセプトCOZYシートで、テールランプやウインカーまわり、カラーパターンはノーマルを踏襲する。なお、フレームは18インチ用補強とリヤショックのセミワイドレイダウン加工、6mmチェーン軌道オフセット等と、仕様に合わせた加工が行われる。
エンジンはピスタルレーシング製鍛造ピストンによってボアを2mm拡大したφ68×66mmの1045cc仕様とした。クランク芯出し/修正やクランクケースのポンピングロス低減加工、オーバーサイズバルブガイドの入れ替えやPAMS HFバルブ組み込み(カムシャフトはノーマル)、またミッションのドッグクリアランス精密シム調整等、多くの加工内容はエンジン系でも17インチ仕様と変わりなく行うものだ。
キャブレターはミクニTMRφ36mm。点火系はウオタニSP2を使い、ナイトロレーシング・手曲げスチール4-1メガホンの排気系に合わせる。
フロントフォークはノーマルより2mm大径のJB KYBφ[純正値:36→]38mm。フロントブレーキキャリパーは40mmピッチのブレンボ(ディスクはサンスター製)として、将来的なCNCキャリパー化などにも対応できる設定にしてある。タイヤはブリヂストンBT45を履く。
リヤブレーキも84mmピッチのブレンボ2ピストンキャリパー+サンスターディスクの組み合わせで、こちらも将来的なキャリパー変更にも対応できるようにした。
スイングアームはスカルプチャー18インチ専用セミワイドスイングアームで、リヤショックはオーリンズS36DR1L。十字断面5本スポークを持つ前後のホイールはPMCソード・ヘリテイジのZ1000Mk.ll用で[純正値:1.85-19/2.15-18→]2.75-18/4.00-18サイズをセレクトしている。