IMPRESSION ACTIVE KATANA(2020)

【IMPRESSION】 ACTIVE KATANA(2020)

“カスタムの素材”という表現はKATANAにはどうマッチするのだろう。アクティブのデモ車が見せるハンドリングやライディングフィールの大きな変化を味わうと、“素材として良好”というワードにたどり着いた。

取材協力:アクティブ TEL0561-72-7011 〒470-0117 愛知県日進市藤塚7丁目55番地 http://www.acv.co.jp/
Report:中村友彦/Photos:富樫秀明


旧型イメージに執着せず、現代手法で磨かれたKATANA

ある程度盛り上がるとは思っていたが、カスタムショップやメーカーの熱意は想像以上……。これが新型KATANAへの印象だ。

その盛り上がりや熱意の背景はいくつかあるだろう。ルックスをもうちょっと詰めてみたい、潜在能力をきっちり引き出したい。ロングランでの快適性を高めたい……。でも、それだけじゃない。手を入れるには、手を入れたく思わせる理由と、手を入れたくなるような素性が大事だ。

例えば、KATANAの開発ベースで基本設計を共有するGSX-S1000/Fは、KATANAと素性は同じ。でも見た目も現代的なGSX-S/Fとは異なり、KATANAは日頃は現行車に関心を示さないような向きや、空冷カタナ好きからもどんなものか、どうなるのかが注目されている。それも理由のひとつになり、盛り上がるのだろう。

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さて、実際にKATANAをカスタム化するにあたって、多くのショップ/パーツメーカーがまず手を加えてきたのは、ハンドル、ステップ、スクリーン。それに続くのはマフラーやリヤショック、前後ホイール、そして外装など。今回試乗したアクティブのデモ車も、同じ手順を踏んでいる。試乗に立ち会ってくれた同社・宇田さんの言葉から、その経緯とコンセプトが分かる。

「KATANA用オリジナルパーツとして当社が最初に着手したのは、空冷カタナの雰囲気を再現するスクリーンとステー。適度な前傾姿勢を実現しながら、ボルトオンで装着できるローポジションハンドル。そしてリヤまわりの雰囲気を落ち着かせるフェンダーレスキットです。この中で最も時間がかかったのはハンドルで、セパレート仕様も含めて数種類を検討した結果、現在の形に落ち着きました。

この3点で、ノーマルとは異なる独自のスタイルの第一段階が構築できました。それで以後は運動性と質感を高めること、ミドルクラス級の扱いやすさを実現することを念頭に置いて、ステップや足まわり、外装などの開発を進めています。

このデモ車を製作する上では、私たちの意識の中には空冷カタナがありました。でもだからと言って、すべての面でそこに近づけようとは思いませんでした。コンセプトはあくまでも『ノーマルの素性に磨きをかけること』。ですから、昔ながらの雰囲気がほしいなと思う人には、この手法は少し違うと思われるかもしれませんね」

そう、アクティブのデモ車は、先に述べた、現在進行中のKATANAカスタムの主流+αと言うべき構成なのだ。逆に言うなら、スーパースポーツのGSX-R1000をルーツとするKATANAは、旧車に寄せるのではなく、現代的な手法で手を入れた方が、好結果が得やすいようだ。

 

大幅なパーツ変更を受けても違和感は皆無

決して乗りづらくはない。ただノーマルKATANAのライディングポジションとサスセッティングには、欧米車的な印象がちょっとある。だからこれまでの試乗ではいつも、走り始めてしばらくの間、頭と身体のアジャストをしていた。でもこのアクティブ車には、いたってスムーズになじめた。

その一番の理由はまず、ライポジだろう。ノーマルよりも上半身の前傾度が増したアクティブKATANAは車両との一体感が得やすいし、前輪の接地感が分かりやすい。加えて、ステップの踏み応えとホールド感が素晴らしい(左右幅が狭いことも好感触)ものだから、ライダーは早い段階から自信を持って、車両をコントロールできる。

ただハンドルグリップ位置は低く遠くなっているので、日常域での気楽さはノーマルの方が上かもしれない。でも主観的に言えば、フレンドリーさとスポーツ性のバランスという点で、アクティブのローポジションハンドルは絶妙な設定だ。

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なじみやすさのふたつ目の理由は、ハイパープロ製フォークスプリングと同リヤショックとした前後サスだ。アクティブが扱い元のこのサス、当たり前だが、デモ車では一新されたライディングポジションと足まわりに合わせてセッティング(市販製品の調整範囲内)されている。実際にもノーマルで見られたフロントの落ち着きの悪さと、リヤのゴツゴツ感は見事に解消されている。しかも上質な乗り心地とここぞ! という場面での手応えを両立した特性は、あらゆる用途を想定したストリート指向のハイパープロならではだ。

つまり、ライディングポジションとサスで、KATANAの乗り味はガラリと変わるのだ。 と、ここまではノーマルで感じたマイナス要素の解消の話だが、アクティブのKATANAには大きなプラス要素が加わっている。具体的には、車体の動きはノーマルより格段に軽いし、ブレーキはとにかくよく効く上に、コントロール性も抜群。その理由はもちろん、ゲイルスピード・アルミ鍛造ホイールと同ブレーキパーツとで全面変更された足まわり。だが、その恩恵と同等以上に、全面変更されているのに違和感がないという点にも感心してしまった。

というのも、ひと昔くらい前まではパーツメーカーのデモ車も、得るものもあれば失うものもあるというケースが多かったのだ。例えば、車体の動きが軽くなったら安定性がいまひとつに、ブレーキの効きが良くなって、日常域では扱いづらい、という感じだ。

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でも今、アクティブのKATANAにはそんな感触が皆無で、恩恵だけが感じられる。これは単にパーツを交換しただけではなく、その後のセットアップが正しく行われていることの証明だろう。そう、宇田さんに話すと……。

「パーツメーカーの人間がこう言うのも何ですが、どんなパーツでも交換後のセットアップは必要です。特に当社のKATANAのように、ライディングポジションを大きく変えた場合は、関連部品の見直しはマストと考えるのがいいでしょう。その意味では、この車両のセットアップの要は調整範囲の広い前後サスです。でもハンドルやレバー、ステップなどもセッティングパーツで、これらの取り付け角度や位置によっても、バイクの印象は変わるんです。逆に言うなら、こうしたセットアップパーツを調整して、理想の乗り味を作り上げて行くことが、カスタムの醍醐味だと思いますよ」

その醍醐味を、このアクティブKATANAは仕立てていたのだ。

 

ACTIVE・KATANA Detailed Description【詳細説明】

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ボルトオン装着が可能なローポジションハンドルは、ノーマルと同じ切れ角を維持。全幅/全高/引き寸/絞り角はノーマルの756mm/73.3mm /104.3mm /25度であるのに対して、アクティブ製は736.5mm/39.4mm /36.4mm /28.4度と低く、前方向。

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ベース部がメインフレームと一体化しているかのような抜群の剛性感が得られるステップは、ゲイルスピードの4ポジション。ペダルは左右とも可倒式で、操作感は滑らかにして確実。ヒールプレートは日本刀の切っ先をイメージしている。

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フロントフォークスプリングとリヤショックはハイパープロ。同社ではKATANA用として、コンスタントライジングレートの前後スプリングがセットのコンビキットや、30mmローダウンキットも販売する。

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フロントマスクは空冷カタナのイメージを再現。ステーは専用設計だが、純正然としたモール付きのスクリーンは、空冷カタナにも装着可能。バックミラーはナポレオンAPT-101だ。

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エラストマー素材のグリップラバーはアクティブで、ブレーキレバーガードはギルズツーリング。ブレーキマスターとクラッチレバー/ホルダーは、ゲイルスピード・エラボレートを装着する。

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ノーマルでは外に張り出すフロントウインカーは、ラジエーターシュラウドの中央に移設。すでにナンバーサイドウインカー(リヤ)を実現した同社ならではのパーツだ。

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チタン+カーボンのスリップオンマフラーは、車検対応品のアクラポヴィッチ。中~高回転域の音質がノーマルより軽やかになっているから、ワインディングでは気分が高揚してくる。

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エンジン左右に備わるスライダーは、アルミベースの上にポリアセタール樹脂を重ねるハイブリッド構造。このデザインなら、保護機能だけではなくドレスアップにも有効だろう。

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シリンダーヘッド側面に付くフレームスライダーは、現代のMotoGPレーサーを思わせるウイングタイプ。万が一の転倒時の衝撃分散を考慮して、2点留め構造を採用。

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純正ホイールの4.55/8.23kgに対して、ゲイルスピードのタイプSB1(アルミ鍛造)は3.49/5.28kgと前後で約4kgもの軽量化。グリーンのブレーキホースはグッドリッジ。

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前後ブレーキキャリパー+ディスクはゲイルスピード。ABSが利かないギリギリの領域が有効に使えるだけではなく、ABSが利いてからのコントロール性もすこぶる良好だった。

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フェンダーレスキットによりナンバープレートとリヤウインカーはテール部に移設され、オーソドックスなスタイルに。試乗時は非装着だったが、アクティブはテール後端に装着して内部収納スペースも備えたロングテールカウルもラインナップする。

※本企画はHeritage&Legends 2020年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

中村友彦

二輪雑誌編集部員を経て独立し、現在フリーのモータージャーナリストとして活動中。クラシックバイクから最新モデルまでジャンルや新旧を問わず乗りこなし解説する。カスタムやレースにも深く興味を持ち、サンデーレースにも参戦する。