本家とも異なる手法で作り上げたクラシック
2021年の6月4日にイギリスのチーム・クラシック・スズキが発表したこのマシン。空冷カタナルックに水冷エンジン+アルミフレームの出で立ちから、KATANAか’15~’20年型GSX-S1000に空冷用カウルを付けて2本サス化したかと思うだろうが、実際には少し異なる。
ベースはそれらのルーツとなったGSX-R1000K8。しかもSBKに参戦していたチーム・アルスター・スズキのエンジンとフレームが使われている。それがなぜこういうことになったかというと、クラシック・スズキのバックグラウンドで分かる。同チームはスズキGB(グレートブリテン、イギリス)が展開する「ビンテージパーツプログラム」のプロモーションのために活動している。
空冷カタナレーサーを起こしてクラシックレースに参戦したり、’80年代序盤に活躍した耐久レーサー、XR69(GS1000R)を油冷化して再現したりし、今も供給されるスズキ絶版車パーツを啓蒙してきた。その一環として同プログラムが扱う純正の空冷カタナカウルを用意し、ロードゴーイングマシンを仕立てたわけだ。少しひねって言えば、空冷カタナカウルは絶対。それを元にして、注目が集まる車両を作って話題にしたい。そういうことだ。だから公道仕様とはしたもののベースも元バリバリのスーパーバイクレーサーで、市販KATANAとはあくまで別路線。
ただその分、作り込みは本気。そこにはカスタムの本質と言うか、魔改造感がある。リヤセクションはサブフレームとスイングアームをアルファ・パフォーマンス・ファブリケーションズがワンオフしてツインショック仕様に。テールカウルもチーム・クラシック・スズキオリジナルのレース用がベースながら、バックスキン調シートを張り込んでストリートスタイルに。元になったカウルはワイド加工だけ行って、タンクカバーを新作した。
オーリンズショックやダイマグ3本スポークホイール、ブレンボブレーキは今の日本風カスタムの香り。これが200ps超発揮のエンジンと組み合わされていると聞けば、ツクバTOTの最高峰、ハーキュリーズクラスを走ってみては……と思う向きも多いのではないだろうか。
モノサスをあえての2本サスにする、あえての空冷カタナルックをスーパーバイクで作る。以前なら油冷GSX-Rでも見られたこの手法、カスタム黎明期にもあった、わくわくする一手なのだ。
Detailed Description詳細説明
フロントカウルはスズキGBのビンテージパーツプログラムによる在庫の空冷カタナ用新品。1インチ(約2.54㎝)のワイド加工とヘッドライトケース/サイドダクトのカーボン化を行ってGSX-R1000K8に装着した。ヘッドライトはLED、フロントマスターはブレンボラジアルを装着。
空冷カタナカウルに合わせた形状、そして低いハンドルに干渉しないようにタンクカバーを新作し、車体全体のラインを整えているのだ。
シートの着座位置には赤の刀ロゴ刺繍が施されるが、これはシートが樹脂(カウルの一部)ではなく、表皮を張ったことの証拠にもなる。
テールカウルはチーム・クラシック・スズキの空冷カタナレーサー用パーツで樹脂製。それにイタリアのRaceSeat製シートを載せている。
999ccで200ps発揮の4気筒エンジンと、アルミフレームは、2008年のSBKを走ったチーム・アルスター・スズキのGSX-R1000K8用を搭載したという。
リヤのシートレールとスタビライザー付きのアルミスイングアームはアルファ・パフォーマンス・ファブリケーション製で、2本サス化が図られた。
フロントフォークはオーリンズ倒立、フロントブレーキキャリパーはブレンボGP4 RXでブレーキディスクもブレンボを使っている。
リヤショックはオーリンズ・ツイン。往年の3本スポークスタイルの前後17インチホイールはダイマグCH3で、リヤタイヤは200/55サイズを履く。