車体側にも駆使されるワンオフテクニック
「このVMAXはオーナーさんがカウルを持ち込んできて、これを付けて、テールも好みで今風の超ショートにしたいって依頼されたものなんです」。エスパーの小宮さんがそう説明する、この1700。
「そもそもVMAXにはカウルの設定なんてないですから、ステーから溶接で作って進めたんですけど、見ての通りカウルがハーフタイプでボリュームはあるし、作ったステーでマウントして、高速でも走らせてみると振動が凄くてグラグラするんです。それを何とかしないとってステーをバランス取って修正を重ねて、解決できました。だからカウル裏に見えるステーは、ごついんですよ」
ハンドル切れ角も確保しつつ防風性も確保したという裏には、そんな苦労が隠れていた。
「テールの方はドゥカティ・モンスターの純正があって、それをあてがってみたら良さそうだったんで、シートレールをカットして付けました。VMAXの場合、ここには給油口があるんですがそれも生かせて、結構合いますね。ほかにはワンオフでチタンマフラーを作って、あとはリヤタイヤを240(ノーマル200幅)にしています」
意外にもエンジンまわりはノーマルベースだったが、今回はVMAX専門で30年という小宮さんお得意のワンオフを、車体まわりと排気系に集中させての仕立てでもあった。
「カウルステーはさっき言った通り、本当に苦労して、2度はできなさそうです(笑)。オーナーさん(カレーの有名店、「もうやんカレー」のオーナーさん)はこのバイクでレモンやタマネギ、ニンジンなんかをどんどん運ぶんです。その時にこのごついステーの間のスペースを生かしてて、実用面もあるなと(笑)」
撮影後にはそのスペースに収まるような搬送用袋をオーナーさんが選んで装着し、ベストマッチで運用しているとのこと。必要に駆られた防風性だけでない利点は、こうして煮詰められたのだ。
Detailed Description詳細説明
オーナー持ち込みのカウルはFRP製。ステーはエスパーオリジナルで、スチールベースでワンオフした。左右エンジンハンガーのフレーム側/エンジン側とそれぞれ共締めすることでバランスを取りつつ振動を防ぎ、ハンドル切れ角も確保するようにできたとのことだ。
メーターまわりはノーマルで、グリップはオーナーのこだわりで旧車の生ゴムタイプを装着。ミラーはカウルステーにマウントされる。
カウル装着によりメーターとヘッドライトの間にできた空間は、積載スペースとしても干渉なく安全に活用できているとのことだ。
テール側はシートレールをカットしてドゥカティ用カウルをセット。オープンすると給油口が出てくるのはVMAXノーマルと同様の仕組み。
65度挟角の水冷1670ccV4エンジンは後期型(1700)VMAXのノーマルで、ワンオフされた排気系への変更に合わせてパワーコマンダーVユニットによって燃料調整を行い、クイックシフターも装着。ほかにエンジンまわりではクラッチカバーをスケルトン化しているのも特徴点。
アルミダイヤモンドタイプのフレームやステップまわりはノーマルだが、エンジンのVバンク間でエンジンを吊るエンジンハンガーの取り付け部上下に注目してみると、カウルステーのベース部が自然な形で取り回されているのが分かる。さすが、と言える部分だ。
エスパーのVMAXと聞けば1200でも1700でもターボ化されていると考えがちだが、この車両はNA(自然吸気)のままカスタムが進められている。
排気系は右1本出しサイレンサーの4-1チタンエキゾーストをワンオフ製作。オーナーはエスパーとカスタムVMAXとの付き合いも長いという。
φ52mmインナーチューブのフロントフォークや3.50-18サイズのフロントホイール、6ピストンのブレーキキャリパーはVMAXノーマルのまま。
リヤホイールはUS仕様オプションのワイドタイプで、6.00-18→8.00-18インチ。タイヤも200/50→240/40サイズへワイド化された。リヤアームは純正のままで使える。