プレスフォーミングタイプと口の字断面タイプ。アクティブがふたつのZRX用スイングアームを 販売するその理由とは?・ACTIVE(アクティブ)

アクティブが販売するZRX1200DAEG用スイングアームには近年のSSのそれに近い形状の“プレスフォーミング”タイプと“口の字断面”タイプの2種がラインナップされる。気になるのはそれぞれにどんなニーズ、使用法を想定するのか? そんな疑問を同社開発部の福田哲史さんにぶつけてみた。

後発ゆえに目指したのは 究極のスイングアームだ

アクティブのオリジナルスイングアームといえば、レーシングエンジニアの光島 稔さん(かつてはNSR500Vエンジン+オリジナルフレームでGP500に挑戦したTSR AC50Mの開発に携わったことなどで知られる)をテクニカルアドバイザーに迎え、’17年に発表したプレスフォーミングスイングアームがスタートだ。それまでもスイングアームは取り扱ったが、他社で設計・製造されたもので一から作ったのはこれが初めてのことだったという。

▲アクティブ・開発部の福田哲史さん。「お客さまに最良の製品をお届けしたいという思いと、コストとのバランスを取るのがいつも悩ましいです」と言うが、スイングアームは自身を持ってお勧めできると胸を張る。

「当時、すでにアフターマーケットでは後発となっていましたから、どうせ作るならネイキッドバイクにスーパースポーツ並みの走りを実現できる、究極のものを作ろうというのがコンセプトでした。

独特のデザインはスーパースポーツのスイングアームに準じていますが、それは剛性と柔軟性のバランスを追求した形状で、本体は7N01の板材を折り成形しながら、横方向の剛性を抜いてある程度のしなりを出し、一方の縦方向では長さ(高さ)を持たせ、ねじれに対する剛性をアップする。車種専用設計品で、進化するスポーツタイヤの性能をネイキッドバイクでも余すことなく使い切ることを目標としたものでした。

注目してほしいのはクロスパイプ部で、普通ならアルミ角材や複数のガセットを使うところを、ここにも大きな弧を描くプレス成形部材を使ったことで、これもスラスト(ねじり)方向の応力を1カ所に集中させず、スイングアーム全体でしなるようにするため。僕も乗せてもらいましたが“スイングアームひとつでこんなに走りが変わるのか”と驚かされました」と、福田さん。話の続きを聞こう。

▲2020 ACTIVE ZRX1200 DAEG/2020年、モーターサイクルショー向けに製作されたデモバイクに装着されたのが、プレスフォーミングスイングアーム。ハイパフォーマンスタイヤの性能を使い切る、がそのテーマだった。

「でも一方でその分コストもかさんで(苦笑)、結果としてライバルを大きく上回るプライスになってしまいました。ただし、テイスト・オブ・ツクバのハーキュリーズクラスで弊社のプレスフォーミングスイングアームを装着したZRXを駆る、オートボーイの新庄雅浩選手の活躍をご覧いただいてお分かりいただける通り、サーキットでも一級品の性能が得られていることも、我々としては誇れる事実なんです」(同)

 

より誰もが使いやすい口の字タイプも追加

「一方の口の字タイプの開発のきっかけは、先のプレスフォーミングスイングアームを販売するうちに、その独特のデザインがカスタムの方向性と違って使いにくいというお声をショップやユーザーの皆さんからいただいたんですね。

“それならプレスフォーミングのコンセプトを引き継ぎながら普遍性の高いデザインにできないか”をテーマに開発したのが、この口の字タイプなんです。形状こそ違って見えますが、どちらも同じコンセプト、流れの中にあります。

▲2024 ACTIVE ZRX1200 DAEG/'24年に発売した口の字スイングアームは、同年の東京モーターサイクルショーでもDAEGに装着されてお披露目。コンサバティブなデザインも、コンセプトはプレスフォーミングと同じ流れにあるバリエーションモデルだという。

口の字タイプは新作した95×36㎜の口の字断面、7000番台の特殊アルミ材を使うメインアーム部を直線として極力長さを取り、角度が必要な部分はアルミ削り出しのエンドピース部で調整、クロスパイプ部は手間がかかるけれど、こちらもプレス成形で起こす。これでプレスフォーミングタイプに迫る剛性としなりを獲得しました」と、福田さんは両品の違いを説明してくれた。下表はそんなふたつのスイングアームの差異を分かりやすくまとめたものだ。参考にしてほしい。

ともあれ、ZRXで言えば前作のプレスフォーミングタイプがDAEGのほか、1200R/S用に、時を下って’24年にデビューした口の字タイプの方はDAEG用のみが販売されるほか、両品にはZ900RS/Cafe、ZEPHYR1100用などもラインナップされている。愛車の走りをアップグレードさせたいライダーには、ぜひ注目してほしいスイングアームなのだ。

 

コンセプトは同じも、お勧めの用途は それぞれに違うことが明確に分かる

上はアクティブが製作した2品の違いを視覚化したレーダーチャート。下の表でお勧めシチュエーションと謳う通り、プレスフォーミングタイプの方がよりサーキットユースに適していることが分かる。ただ、これは製品の優劣ではなくユーザーが何を求めるか、で使い分けるのが適切だ。

 

究極のスポーツ性を追求した 意欲的な逸品

プレスフォーミングスイングアーム 41万8000円 : ヘアライン仕上げ/純正キャリパー不可 キャリパーサポート別売

プレスフォーミングタイプのディテールで注目したいのが、アーム本体からなだらかな弧を描きつながるクロスパイプ。強度解析で得たデザインによるプレス成型部材で安定した挙動を生み、結果、加速時のトラクションを底上げできるという。7N01材削り出しのエンドブロックにはチェーンふたコマ分の伸縮ができるロングチェーンアジャストを採用。

2009年のZRX1200 DAEGのデビュー直後からパーツ開発に当たって来たアクティブ。この2020年仕様のデモバイクの製作時には、現在につながる大物パーツはほぼすべてが完成していた。プレスフォーミングスイングアームは’17年のデモバイクから連綿と装着が続けられてきたものだ。

 

ストリート向きの バリエーションモデル

口の字スイングアーム 30万8000円 : ポリッシュ仕上げ/トルクロッド付属 キャリパーサポート別売

アーム本体の口の字構造と肉抜き軽量化されたエンドブロックが分かる。各部サイズの違いこそあれ、プレスフォーミングタイプも同様だ。こちらもプレスフォーミングタイプ同様の思想によるクロスパイプを装着、溶接後に同軸加工される高精度なピボット構造を筆頭とした精密組み立ても行われる。純正チェーンガード装着不可も同じだ。

“アクティブが製作する最後のDAEGカスタム”として発表されたデモバイク。モチーフは’80年代車のZ-GPで、ファイアクラッカーレッドの外装が東京MCショーの会場でも目を惹いた。話題とした口の字スイングアームや同じ新作のゲイルスピードType-Jなどが目玉アイテムとして装着された。

 

開発の基となった純正スイングアームの変遷を改めて振り返ってみる

この機会に純正スイングアームの変遷もおさらい。1100は丸断面パイプ製で530mm長(ピボットセンター〜チェーンアジャスターセンター間、以下同)。1200では楕円断面材×540mm長で下側ショックマウントが15mm前進。エンド部内幅も10mm拡大した。DAEGはD字断面材×540mm長、下側マウントは1200比で20mm後退(1100比5mm後退)。上側は3車同じだ。

 

【協力】協力:アクティブ TEL0561-72-7011 〒470-0117愛知県日進市藤塚7丁目55番地 htttp://www.acv.co.jp/

※本企画はHeritage&Legends 2025年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。