
今も動きが 止まらない“エフ”の 周辺環境を知る・TTRモータース
製作車両のトラブルを直して今後へのプラスも
純正同様の前後18インチ&ゴールドホイールをアルミ鍛造で置き換え、全体にスマートなイメージも追加したCB1100RC。各種車両を扱いつつもCB-F/Rに多くの作業メニューやパーツを用意するTTRモータースによるものだ。最近製作した車両とも言えるのだが、背景が少し異なった。TTR・林さんに聞いていこう。
▲TTRモータースの代表、林 一彰さん。CB-F/Rには多くのリフレッシュメニューやオリジナルパーツを展開する一方、その存在感を高める取り組みも行う。
「この車両は元々オーナーさんがノーマルで乗っていらしたんです。それが当店がTOTモンスタークラスにCB1100Rを走らせた(’15年)時に“同じ仕様の足まわりを作ってほしい”と依頼されて、その仕様で組みました。それでしばらく乗っていらしたんですが、昨年シリンダーからのオイル漏れが見つかったんです。ではオーバーホールしましょうとなって、作業に必要なパーツも集めて。フルオーバーホールでエンジンを下ろしますから、合わせてフレームも今後乗るためにとパウダーコードで塗り直ししたんです」
TTRのTOT参戦はついこの間とも思っていたが、もう10年が経っていた。このRCも足まわりを作ってからそれに近い時間が経っていたわけで、その時不明だったエンジンのオーバーホールタイミングも当然だし、その間にTTRが自店の作業メニューに加えた機能的な作業(塗装はその主なもので、放熱と耐傷性を高めるガンコートなどがある)によって、以後長く乗る要素も強められる。
▲フレームもエンジンもフルに レストアして完成したTTRモータースによるスペシャルRC。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!
以前にも林さんはエンジンが下りるタイミングでフレームを塗るのがいいと教えてくれたが、今回はその実例が出てきたということだ。
下の欄で作業の様子を詳しく紹介しているが、下りたエンジンはすべてバラしながら各部をチェックする。
「シリンダーからのオイル漏れでしたから、シリンダーヘッドのゆがみやシリンダースタッドボルト(一部の隙間はオイル通路でもある)の隙間の詰まりが原因に考えられるのですが、ヘッドは左右対称でゆがみなし。スタッドのネジ山も大丈夫そうでした。
ただ、エンジンに開けて組み直した形跡が見られたんです。スタッドボルトがきちんと奥まで入っていなかった。それと、クランクメタルも1100用でなくて750用が入っていました。
これ(スタッドボルトの締めが緩かった)が原因と分かりましたので、改めて当店のRECS(キャブレター/エンジンパーツの清掃システム。一般的なブラスト等よりも短時間で作業でき、清掃に使う粒子が後残りしない)で清掃し、再組み立てしました。
合わせてピストンは0.25㎜オーバーサイズ品を組み、吸排気バルブも入れ替えました。純正ではないんですけど、社外で使えるものがあるのでそれを使っています。外観もガンコートで仕上げました」
▲エンジンが組まれ、再塗装したフレームに搭載される。
リフレッシュされたエンジンが同じくリフレッシュされたフレームにドッキングされる。それだけでなく、ともに今後長く仕上がり状態を維持できる外観塗装も施されている。足まわりは既に構築されたものだが、これもメンテナンスをきっちり施すことでさらに使える状態にあるし、必要に応じてオーバーホールという手段もある。
「今回エンジンは、ベースガスケットとヘッドガスケットをメタルにして組んでいるんです。純正だとペーパー(紙)で、組んだときは問題ないのですが、変なときにオイルが漏れてくる。1年くらいするとガスケット自体がはみ出てくることも多いんです。
なのでこのタイミングでメタル(スチール)にしました。締め付けトルクもしっかりかかりますし、金属同士の接触になるので放熱にもいいかなと思っています」
長く乗るにはトラブルを予見し、そこを先に対策しておくことも大事。それを細かく考えて投入してくれるのも、TTRの良さと言えそうだ。キャブレターもこの車両の足まわり製作時にはTTRで確立していたCB1300SF純正の流用、点火系にメタルギアワークス製を使い、排気系に安田商会製チタンを使うなど、いいパーツを積極活用するのもCB系をよく知るからとも言える。
車両の調達や750F用にすぐ載せ替えできるようにと用意されるリビルトエンジン、ほか純正に近い印象を作るパーツの製作・販売と、CB-F/Rを支える要素を数多く持つTTR。整備や戦術の塗装等、CBに絡むことならまずは相談をというところだ。
エフの世界を広げ支えるエフモンの展開にも注目
そんなTTRだが、CB-Fに絡む活動のひとつに“エフモン”がある。昨年の東京モーターサイクルショーで発表し、その後販売を始めたエフモンは、“エフ(CB-F)みたいなモンキー(125)”。モンキー125に被せてCB-Fのスタイルを原付2種で遊べるコスプレ外装キットだ。すぐ使える塗装済みの5タイプ、自由に塗装できる無塗装があり、装着はじつに簡単。
750や900/1100のエフを所有するオーナーがチョイ乗りにもエフの気持ちで楽しむ、モンキーの形をスポーツ寄りにする。そうした層からの人気が高いそうだ。
以前、こちらの記事では特別カラーの〝龍Jin〟を紹介したが、その龍の字が上杉謙信の使っていたものとして、山形県米沢市と、TTRのある埼玉県草加市の文化交流にエフモンがひと役買うのだという。下記で紹介しているのはそのいくつか。ちょっとかわいいけれどCB-Fの姿を見てもらうことでエフモン、そこからひいてはCB-Fへの興味を持つ機会を増やすことで、Fが過去のものでなく、最近見たことあるというような位置づけになって、Fの世界を活発にできればという考えもあるのだ。
▲エフモンアンバサダーのsuuさん(YouTube/suuちゃんねる)が5月中旬にホンダドリーム長崎(エフモンを展示中)までこの車両でツーリングしてイベントを行った。
実用性を高めるリヤキャリアなどのオプションも増やそうとしていて、つい先日はYouTuber suuちゃんねるで草加から九州へ試作キャリア装着車を走らせ、ホンダドリーム長崎でエフモンを見てもらうというトライも行った(福岡のタジマエンジニアリングにも立ち寄っている)。
一瞬、Fとはオフセットしたような活動にも見えるが、前述したように、デフォルメでもFの形を見てもらうことで、本当のFの姿を知ってもらい、興味を持ってもらい、その先の窓口も作っておく。その窓口には、壊れやすいのでなく、今後も長く乗れる手法を施したFが待っているということだ。
入念なレストア作業によって徹底的にネガをつぶす
1度完成して乗られていた車両だったが、エンジンオイル漏れが見られたことから全バラして 状態チェックと原因追究をし、そこから改めて再構築を行った。フレームは新たにパウダーコート、 エンジンも全バラと清掃も行って、リフレッシュされた。
エンジンを下ろして単体となったフレームの塗装をいったん剥がして下地処理する。
パウダーコートで純正レッドを再塗装。耐錆性も高く腐食を抑え傷つきにも強くなる。
下ろされたエンジン。ここは足まわりカスタム時には手を入れていなかったパートだ。
各パートは状態を確認しながら分解していく。シリンダーからのオイル漏れで疑われたシリンダーヘッドのゆがみはなく、左右対称状態にあった。
クランクやミッションも状態確認後に清掃。どのパーツも問題はなかったがクランクを支持するクランクメタルが1100用でなく750F用が使われていると分かった。またシリンダースタッドボルトが底まで入っておらず、これらがオイル漏れの原因だった。
オーバーホールに当たり0.25㎜オーバーサイズピストンを組みシリンダーもホーニング。
分解したエンジンパーツ(上写真)とその後洗浄/加工、塗装して組む直前のもの(下写真)。
エンジンが組まれ(上写真)、再塗装したフレームに搭載(下写真)。今の状態が分かっているからここからゼロスタートでき、長く乗れるようになった。
原付2種モンキーに被せる “エフモン”もCB-Fをサポート
CB-Fに特化したTTRだからこそのこだわりポイントを満載したCB-Fみたいなモンキー125、エフモン。モンキーにこの外装を被せてフロントフェンダーを交換するだけ(フェンダーで数分、カバーは数十秒)。未塗装の外装20万7900円に、オーダー時に塗装プラン(写真のFC REDほか純正色12万1000円、特注プランが13万7500円)を追加すれば塗装済みの外装キットが手に入る。CB-Fを持っていて普段のチョイ乗りにCB-Fの雰囲気をそのまま持ち込みたい、カラーを揃えて着せ替えたいというちょっと違ったCB-Fニーズにも応える1台だ。
TTRのある埼玉県草加市と、エフモン龍jin号(限定1台の販売車)のサイドカバーに入った龍の字が上杉謙信の使ったものに由来(下写真)として、謙信ゆかりの山形県米沢市との文化交流にエフモンを活用。上写真は上杉家廟所と龍jin号、中は米沢 上杉まつり(5月3日)で行列を行った上杉軍団の面々。「エフモン文化交流です」と林さん。
【協力】T.T.Rモータース TEL048-925-8655 〒340-0017埼玉県草加市吉町4-3-28 https://bike-ttrm.com
※本企画はHeritage&Legends 2025年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
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