
【CUSTOM MACHINE IMPRESSION】試乗を通して知る ヨシムラが提案する KATANAの楽しみ方!
各部品の効能に加えてマシン全体の調和に驚く
スズキの4気筒スポーツバイク好きにとって、これはひとつの理想形じゃないか──。
いや、初っ端から大きめの風呂敷を広げてしまったが、ヨシムラが手がけたKATANAを体験して、そんな印象を抱いた。なぜならこのバイクは、往年のカタナを思わせるフィーリングと、’00〜’10年代前半のスーパーバイク/耐久レースで数多くの栄冠を獲得し続けたGSX-R1000に通じる運動性能を、かなりの高次元で両立していたからだ。
もちろん、’19年から販売が始まった現行のKATANAも、ノーマルでもそうした素性を備えている。デザインは往年のカタナの新しい解釈という雰囲気で、エンジン+シャシーの原点は’00〜’10年代前半のGSX-R1000なのだから(細かく書けば、ロングストローク指向の並列4気筒はK5〜8の転用で、直接的なベースは’15年登場のGSX-S1000)。
けれど、ヨシムラKATANAの場合は、先のカタナ感とGSX-R1000感が、それぞれ5割増しと言いたくなる印象なのだ。以降はその事情を説明しよう。
まず、往年のカタナを思わせるフィーリングの原因は、戦闘的なライディングポジションを形成するハンドル/ステップキットと全高を延長したスクリーンの、3点のヨシムラパーツの効果が大きい。ライディング中に眼前に広がる風景はカタナっぽくなっているし、車体とライダーの位置関係もカタナ的。中でも注目すべきは、単にグリップ位置を低く・遠く・狭くしただけではなく、カタナのタレ角と絞り角を見事に再現したハンドルキットのXコントロールで、できるならこの部品をスズキに純正採用してほしいと思ったほど。
▲往年のカタナ感と ひと昔前のGSX-R感が いずれもマシマシだ!。
続いては’00〜’10年代前半のGSX-R1000に通じる運動性能の話だが、よくよく考えると〝通じる〟という表現は微妙に間違っているのかもしれない。絶対的なパワーや速さはGSX-R1000に及ばなくても、爽快感や充実感で、ヨシムラKATANAはGSX-R1000以上の資質を味あわせてくれたのだから。
機械曲げチタンサイクロン・デュプレックスシューターとTMSファンネルキットを装備し、サブコンで燃料噴射マップを調整したパワーユニットは、高回転域で胸がすくような加速を堪能させてくれるだけではなく、全域でパワフル&コントローラブル。そしてオーリンズ製のフロントフォークインナーカートリッジ+リヤショック、ハイグリップタイヤのブリヂストンS23、サンスターのプレミアムレーシングディスク、ドライカーボンホイールなどを贅沢に採用した足まわりからは、路面の情報が常に瑞々しく伝わって来て、車体姿勢の制御は自由自在。だから、思い切ってコーナーを攻め、思い切ってスロットルを開けることができるし、どんなに無理をしても転ぶ気がしない。
……などという意識でスポーツライディングを楽しんでいる最中、僕が改めて感じたのは各部のセッティングの絶妙さだった。
ヨシムラKATANAは自社製品も含めて、数多くのアフターマーケットパーツを装着しているのにも関わらず、それらのいずれかが突出することはなく、全体の調和がきっちり取られている。一般にデモバイクというと、自社パーツ単体の効能に注力しがちになるものだが、このKATANAはマシン全体のバランスの良さ、誤解を恐れずに書くならノーマルに匹敵するその扱いやすさに、感嘆させられたのである。
今回の試乗でそれらを実感した後、筆者の頭に浮かんだのはヨシムラが’01年に5台のみの限定生産を行ったコンプリートマシン、KATANA1135Rだった。カタナのファイナルエディションがベースの1135Rと今回のデモバイクは、生い立ちも素性がまったく異なるけれど、スポーツライディングの楽しさという意味で、同じ匂いを感じたのだ。
らしさと運動性能を大幅に高めつつもノーマルと同等の扱いやすさを維持する
初代から数えると、ヨシムラとカタナ/KATANAシリーズの付き合いは40年以上に及ぶ。現行KATANAはデビューした’19年にはテスト車を導入し、これまでも多種多様なパーツを開発。今回テストしたデモバイクはその最新仕様で、自社製品だけではなく同社が信頼するブランドのパーツを数多く採用する。
エンジン内部はSTDのままだが、吸気系にはトルクカーブを改善するTMSファンネルキット装着。ラジエターコアプロテクターやレーシングスライダー/エンジンガードキットのPRO SHIELD各製品、サービスホールプラグなどは、ヨシムラのオリジナルパーツだ。
フォークのインナーカートリッジとリヤショックはオーリンズ。タイヤはブリヂストンS23、ドライブチェーンはRK、ブレーキディスクにはサンスターを選択する。
機械曲げチタンサイクロン・デュプレックスシューターは、サブサイレンサーの採用で、伝統的なスタイルと現代的な性能を両立した。
独創的な構成のXコントロールは、ノーマルのハンドルマウントを使用して装着するもの。ウインドアーマーと命名されたスクリーンは、形状だけではなく、4本のボルトを用いた固定方式や取付間隔もかつてのカタナを再現している。
ヨシムラの凸ロゴが入るFRPタンクカバーはハンドル切れ角を考慮したデザイン。
同社製ハンドルとセットで使用したいX-TREADステップキットは、5段階調整式だ。どのポジションを選択しても、ステップバーはSTDより上方/後方となる。
【協力】
ヨシムラジャパン 〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津6748 https://www.yoshimura-jp.com/
※本企画はHeritage&Legends 2025年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!

WRITER