油冷機プロショップとしてパーツブランドも興し独自製品を続々開発中・飯田レーシングファクトリー

神奈川・川崎の飯田レーシングファクトリーといえば、代表の飯田さんが入れ込むGS1200SSのプロショップとして知られるお店。そんな同店のスキルを頼って油冷GSX-Rシリーズも多く訪れる。同店ではそんなオーナーたちの細かなリクエストに応えるべく、オリジナルパーツを製作。直近ではそんな製品群に“YH PRODUCTS”のブランド名も冠した。飯田さんに最新状況を聞こう。

ユーザーの声に耳を傾け反映する“飯田”スタイル

ショップ代表の飯田弘樹さん自身が20年以上をかけて楽しみ続けるGS1200SSを中心に、油冷機をメインに手がける飯田レーシングファクトリー。同店が最近、特に注力するのはオリジナルパーツの開発で、すでに多くをリリースしたことからそれらに“YH PRODUCTS”のブランド名を冠した。その由来は?

▲代表の飯田弘樹さん。飯田さんは大手中古バイク販売チェーン、著名カスタムショップに勤務後、2019年に飯田レーシングファクトリーをオープン。愛車にもするGS1200SSのほかGSX-Rを筆頭とする油冷機のカスタムとメンテナンス、そこから生み出すオリジナルパーツの開発に注力する。

「YHは亡くなった父、勇一と僕・弘樹の頭文字から取ったんです。そもそも僕は、父とバイクライフを趣味として楽しむことからスタートしてここに至っていますし、ショップだって父と一緒にやりたかった。そんな思いを込めてのネーミングなんですよ」(飯田さん)

▲1989年型GSX-R1100にオーリンズ正立フォークのフィッティングパーツ開発のまっただ中だった。

そんなYH PRODUCTSの現在の主流は、やはりGS1200SS向けなのだが、今後は油冷モデル全般に使える、拡張性の高いパーツ作りを目指している。今回の取材時にはちょうど、オーナーのリクエストに応えての、’89年型GSX-R1100(K)へのオーリンズ正立フォークのフィッティング確認の真っ最中だった。

▲飯田さんが得意とするGS1200SSのフォークスパンは205mm、'89年型GSX-R1100(K)は同じΦ43mm正立フォーク装備車ながらスパンは200mmと若干狭い。そのため、GSX-Rにオーリンズ製フォーク装着のためにカラーを新作、各所のフィッティングを確認するのが今回の作業。

「ウチにはすでに、GS1200SSにオーリンズ正立フォークをポン付けできる“オーリンズ正立φ43フォークコンバートKIT”があるのですが、GS1200SSのフォークピッチ、205mmに対応するモノ。1100Kは200mmですから、それに合わせてカラーやフィッティングパーツを検討しているところです。一度データを取ってしまえば、これからも同じリクエストに応えられますからね。ただし、油冷GSX-R1100でφ43mm正立フォークを使うのはこの’89年型のKだけで、750も’88年のJと’89年のKしかありませんから、どれだけのニーズがあるかはちょっと疑問なんですけれど」と、飯田さんは笑う。

▲得たデータは当然、以降の入庫車やパーツ作りに反映される。

飯田さんのそうした細やかな仕事ぶりは着実にユーザーに評価されてもいて、同店を頼りに着実なステップを踏む、カスタムGSX-Rオーナーも多い。1100Jの佐々木さんや750Jの橋本さんもそんなおふたりだ。

「コンプリートカスタムとして一遍に作り上げる手法もありますが、ウチではひとつずつパーツを換えてその効果を確認しながら楽しむ方が多いですね」(飯田さん)

そんなオーナーたちの声を丁寧に汲み取りながら、オリジナルパーツ作りにも反映していくという流れが、飯田レーシングファクトリーのスタイルなのだろう。事実、飯田さん自身も愛車を駆って各所で開かれるミーティングやイベントに顔を出し、積極的なコミュニケーションを行っている。

「新作パーツからのお勧めは、TMRキャブレター用の75mmロングファンネルです。僕自身が実走しながら長さを決めたものですが、よくロングファンネルと設定される50mm程度と違い、油冷機向けに実用域の8000rpmあたりに吸気慣性効果が最大となる設定にして、パワーとトルクのピークが楽しめるようにしました。ぜひ体感してほしいアイテムです」(同)。

ほかにも試したいアイデアは色々あるけれど身体はひとつなもので、と笑う飯田さん。油冷GSX-Rオーナーなら、同店HPで逐次更新されるブログで新製品の開発具合をチェックされたい。

 

ニーズを素早くキャッチしてスピーディに製品化



上写真は今回のフィッティング作業用に、既存のGS1200S用をベースに寸法取りして試作した、アクスルシャフトまわりのパーツ類。下はオーリンズ正立φ43mmフォーク装着時に使えるように開発中という、天吊り式フロントフェンダーKITに同梱されるフォークマウント。いずれも間もなくカタチになるはずだ。



TMRキャブ用75mmロングファンネル(上)はアルミ製でφ36mmとφ40mmのTMR対応品がある。1万3200円/1個〜。別途ブラックアルマイト可。下はオーリンズ正立φ43mmフォークに使うキャリパーサポートで、左からNISSIN製4P、ブレンボ4P、トキコ6P用。GS1200SS用フォークコンバートKITの同梱品。



上はTOT参戦も視野に入れ、保安部品を外せばサーキット走行できるようにと製作された、GS1200SSデモバイク2号機。下はGS1200SS用“オリジナルφ43正立ステムKIT”だ。トップブリッジは大きく軽量化された人気アイテム。これらで得たノウハウは当然、油冷GSX-Rにも投下されるものだ。

 

ショップとともに愛車をじっくり楽しむ2例を紹介!


本文にある、佐々木さんの’89年型GSX-R1100(写真右)と橋本さんの’88年型GSX-R750(写真左)の最新仕様。2台の進化を見れば、飯田レーシングファクトリーでのカスタムの楽しみ方も分かる。カスタムメニューの進め方や予算組みに悩んでも、飯田さんが親身に相談に乗ってくれるのも同店の特長だ。


佐々木さんの’89年型GSX-R1100[J]。最新の仕様では前後ホイールがMAGTAN JB1(F:300-18/R4.50-18)に変わり、フロントフォークはヨシムラ・ショーワφ41mmに置換された。写真では見えないがヨシムラ・ボンネビルパーツと現代パーツを組み合わせ、カスタムライフを楽しむ。


GSX-R1100のフォルムを生かし美しく仕立てられたライト改とも言える、’22年の撮影された佐々木さんのバイク。



’88年のAMAスーパーバイクを走ったヨシムラのレーサーをモチーフにカスタムを進める橋本さん。自ら手を入れた1号機(1st、写真上)の面倒を飯田さんに依頼したことから付き合いがスタート。現在では飯田さんがエンジンを組んだ2号機(2nd、写真下)とのなんとも贅沢な2台持ちでGSX-Rを楽しんでいる。その2号機では当時のAMAスーパーバイクで認められた1mmオーバーサイズピストンを組んだ769cc仕様というこだわりぶり。



足まわりやマフラーの進化も見て楽しい。1号機(写真上)のホイールは純正サイズ(F:3.50-17/R:4.50-17)からリヤを1100用の5.50-17に変更。2号機(写真下)では前後にMAGTAN JB1を履くことでそれを再現した。



マフラーのサイレンサー部にも2号機(写真下)にはバンク角を稼ぐためのカットが入ったり(テールパイプとサイレンサーは飯田レーシングのワンオフ品になった)、外観上もよりスパルタンな方向で進化が進んだ。

 

【協力】飯田レーシングファクトリー TEL044-863-7088 〒216-0035神奈川県川崎市宮前区馬絹2-6-3 グリーンピア馬絹1F https://iidaracingfactory.jp

※本企画はHeritage&Legends 2025年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!

WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。