“カタナ”に乗る理由と車両の性格や背景を元により楽しめる手法を提案・オオノスピード

代表・大野さん自ら空冷カタナに乗ってはいじってきた経験を、純正補完から機能強化まで多くのオリジナルパーツや手法として反映してきたオオノスピード。そのパーツ強化を行い、車両を製作し、さらに現行KATANAにもその性格を反映してより楽しめる車両に仕立てる手法を見ていこう。

多くのトライが生んだ空冷カタナへの手法群

スクリーンやカウルなどの外装に作動の軽いクラッチホルダー、フロントフォークの動きをしっかりさせてくれるインナーキットの鬼脚(ききゃく)。最近では純正2本出し形状をそのままステンレス(菊砲)/チタン(桜砲)で置き換え、耐候性・耐久性にも配慮しつつ軽量化や上質化が図れるマフラーを。さらには純正廃番を補完するエンジン系パーツにPE3ユニットなどの電気系パーツ。

オオノスピードが開発/製作、あるいは発案して調達する空冷カタナ用パーツはじつに幅広く、そして実用的でもある。代表の大野さんがカスタムブーム以来、レースにストリートに、17インチも18インチもノーマルもとカタナに乗りまくり、これはどうだ、こうするとどうなるかという手法やパーツを試してきたこと。その中から新製品が生まれ、改良も重ねられ、使われるうちに定評を得てきたというバックグラウンドがある。

▲オオノスピードの大野康広さん。空冷カタナも新型KATANAも多くのシチュエーションで乗り続け、多くのパーツを製作。そのパーツは広く支持されている。

車両作りもそうで、紹介するGSX1100Sはそんな大野さんの手法を反映した近作。

「以前に“雪風”というコンプリートカタナを作っていたのですが、それがほしいという依頼を受けました。補強は雪風に準じています。17インチ向きでもあるんですけど、今はフロント19インチでもグリップが昔の17インチくらい上がってきてますから、この補強でしっかり感も感じられます。

リヤはじつは純正17インチでなくて、750カタナ用の18インチ。これは18の方がタイヤが選べるから。実は純正のF19インチって、荒れた路面に強かったり操作感もあったりで、結構いいんですよ。エンジンは状態がいいのでノーマル、サスはセット出しもしてます」

▲かつての自社コンプリートを手本に長く乗り込めるように現代的に製作されたオオノスピードのGSX1100S。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

なるほどと思わせてくれる手法。かつての経験はタイヤを初めとした社外各パーツの進化によって、応用できる範囲も広げていた。

一方で、オオノスピードオリジナルの空冷カタナ用パーツは、その種類とマニアックさを増す一方にある。ここ半年の近作に絞っても、ステンレス製のクラッチレリーズピンに同じくリヤマスターピン。純正廃番となったシートフックプレート、同じく1100用ステンレス製アシストグリップ。これは単に廃番補完だけでなく、リザーバータンク付きショックを使う時にもリザーバーが干渉しないよう形状が工夫される。

オーリンズ・ブラックラインのリヤサスはオリジナル仕様でよりカタナに合うセッティングを。PE3点火ユニットは純正流用系パーツを使わないことで、何かの点火系廃番の影響を受けないようにする。これには専用、あるいはオリジナル点火マップもあるし、今後の発展性も高い点にも注目できる。

さらにはノーマル形状のカウルステーにカタナ用各種外装も続き、いずれはカーボンタンクもと、空冷カタナに関しては足まわりから外装、電装に動力系ショートパーツと揃える勢い。ここ数年のパーツ製作・供給事情も考え、国内製作を重視している。さすがにエンジン内の大物は難しいけれどと大野さんは言うが、こうして供給してくれる(定評もある)パーツは買って使い、次につなげるのがユーザーの使命だとも思える。

 

現行モデルの良さは足の動き方から導き出す

現行KATANAについても大野さんは初代M0、現行M2と購入し、空冷で走るのと同じステージを文字通りに走り回り、どんな特性かを探り、対策も考えた。

新型のM0/M2カタナをとっつきやすくしスポーツ感を高めるには空気圧を少し下げ、その上でリヤサスを換装するのがいいと大野さん。自身もこのM2(GTテールカウルなども装着)で文字通り走り回り、適正セッティングを見つけ、それを可能にする足まわりパーツを製作。

「今のKATANAは、足まわりに注目するといい。燃費を良くしたりとかの影響もあってか、タイヤの指定空気圧が高いのかなと思いますから、まずこれを少し下げてやる。それで乗りやすいと感じたら、その空気圧でサスを合わせてやるという考えです。

先にリヤ。純正は固いからとプリロードを落とす方向に行きやすいですが、それだと車高だけ下がってしまう。本当はサスは柔らかい。でもすぐ二人乗り設定域に入るようなリンク比の立ち上がりが、固さを感じる原因です。それでノーマルリンクとショックでは変更も難しいので、1名乗車に合うようなリンクを作りました。これでかなり乗りやすくなります。

▲アラゴスタショックはシート高で25mm下げつつ性能も維持する写真のフルスペックのTYPE-RやTYPE-Sを用意する。

またはショックを換える。オーリンズもありますし、20mm車高も下げてくれて安心感も高まるアラゴスタサスペンションも用意しています。オーリンズについては最上級のTTXをKATANAに使えるようにしたインストールキット(TTXショック/リンクプレート/ロッド)を作りました。

▲KATANAに設定のないオーリンズTTXを装着でき、リンク比も見直した「オーリンズTTXリヤサスペンション・インストールキット」のリンクロッドとリンクプレート。(TTXショック込みで販売中)。

それでリヤと車高が決まったら、フロントフォークを合わせてやる。レートを上げつつ乗り心地も良くした、フロントスプリングとオイルのセットも作りました。それで足まわりがしっかり決まれば、M0/M2KATANAもずっと乗りたくなると思います。GSX-Rってとてもいいプラットフォームを使っているんですから、使い方、そして良さをどう引き出すかではっきり変わります」

▲フロントフォークにも追従性の上がるスプリングセットを用意する。

素性を見抜き、ちょっとしたことから楽しさを増すのは空冷と同じ。新型用の「GTテールキット」はしっかりした支持を受けている。ロングテールのシルエットによるルックスの安心感。積載スペースがあることも、その安心につながる。大野さんの狙いはユーザーにも理解されているということだ。これらのパーツ群からも新型KATANAの楽しみは増す。

改めて空冷に話を戻そう。大野さんは、今こそノーマルを知ることが大事という。使われているパーツ、大物だけでなく、どんな留め方をしているか(ボルトなのかピンなのかなど)や配線、常時点灯か否か等の世代ごとの違い。そこを把握して作業をする、パーツを選ぶことで、車両も良くなる。

あとはもう少し専門店が増えてくれると、カタナをサポートする力が底上げされるとも考えている。

いずれは完成させたいという、自製パーツによる自身用のフルカーボン・カタナ。それも注目したいし、できる頃には、もっとカタナの環境が良くなっているといい。

 

多くの経験から 生まれた手法はGSX1100Sのこれからを支える

的確な補強は現代タイヤにも有効に働く


上で紹介した車両のフレーム補強。ネック部周辺にプレートを張り(1枚目)、背面後ろ側の左右連結バー後ろの上下にコの字状のプレートを追加。またキャブ後ろはハーフパイプを被せる(2枚目)。シートレール/リヤショックマウント/ピボットが作る△部分は各角の内側に三角プレートを追加(3枚目、シートレール基部は上側も)。リヤショックマウント部とこの左右連結バー部も補強(4枚目)。当時の17インチ対応だったが、性能の上がった今の18インチタイヤにも効くと大野さん。

 

純正補完や機能拡張が期待できる、オオノスピード・カタナパーツの近作各種パーツ


「PE3」はデータロガーや昇圧回路も内蔵した制御/点火ユニット。詳細は問い合わせを。


純正形状のリプレイスマフラー。写真はチタン製の「菊砲」、ステンレス黒めっき仕上げの「桜砲」もある。


オーリンズの「GSX1100S専用ブラックライン」は設定のないカタナ用を受注生産。


純正車に使えるインナーフェンダーKIT。


ステンレス・クラッチレリーズピン。リヤマスター用も用意する。


純正廃番をステンレスで復刻したシートフックプレート。


復刻・バッテリーケース。


ステンレス・アシストグリップ。

【協力】オオノスピード TEL043-227-9568 〒260-0006千葉県千葉市中央区道場北1-8-2 http://ohno-speed.com

※本企画はHeritage&Legends 2024年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
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