GALE SPEEDの過去&未来にカスタム趣味の今昔を知る!

2002年、アクティブでは初となるアルミ鍛造ホイールのブランド名として誕生した『GALE SPEED(ゲイルスピード)』。以来、20年超の年月を経た現在では、同社がプロデュースするフットワークパーツを包括する、国内アフターマーケットのビッグブランドへと成長した。ここでは、そのスタート時の経緯とラインナップ拡充の流れを上田和由社長と、当時からGALE SPEED製品群開発の先頭に立ち続ける、シニアエンジニアの深瀬さんに振り返ってもらう。そこからは今日に至るカスタムパーツ開発の流れも見えてくるはずだ。

ワガママが生み出した14万8000円! 鍛造アルミホイール『タイプC』のデビュー価格

▲お話を伺ったのは、アクティブでは3代目となる上田和由社長(右)と開発部シニアエンジニアの深瀬直樹課長(左)。「アクティブの物作りの基本は昔から上意下達ではなく、皆で“社員の僕たち自身がほしくなるもの”を発案していくこと、と上田さんは言う。

まずは記憶を2003年に巻き戻そう。この年はZRXシリーズの第2世代となる1200R/Sや、FI化されたCB1300SFが発売され、世はビッグネイキッド全盛、1990年代からのカスタムブームも勢いが続いていた頃だ。

その前年の2002年春、アクティブが新ブランド『ゲイルスピード』の立ち上げを発表。東京モーターサイクルショーの会場では初代アルミ鍛造ホイール(後のタイプC)がお披露目された。そして先述の2003年に同ホイールは販売に移されたのだ。衝撃だったのは前後セットで14万8000円というプライス。まだ、他社はマグネシウム鍛造ホイールの拡充を推進していたタイミングで、価格はそのマグ鍛造品の約半分だったのだ。

「当時、僕は社外にいたので詳細は知りませんが、ずいぶん思い切ったことをしたものだ、と思ったものです」と切り出したのは上田和由社長。上田社長はアクティブ初代社長だった上田敏幸さん(現アクティブHD会長)のご子息で、1998年にはアクティブにアルバイトとして入社。翌1999年には一度退社して、今も同社が輸入販売するオランダ・ハイパープロ社で働くなど、いわゆる〝外の空気〟を吸っていた頃。アクティブには2004年に再入社する。

その言葉を引き継いだのは初代アルミ鍛造ホイールからゲイルスピードの開発に携わる、深瀬さんだ。

「アルミ鍛造ホイールで当初、目標としたのは、アクティブで生産から販売まで一括管理することで、絶え間なくお客さまに製品をお届けすること。当時は海外ブランドが主流で鋳造マグホイールもまだ残っていましたから、やはり納期や品質でバラつきが出ていた。それなら自分たちでやりたい、まずはそこからでした。そしてもうひとつが、マフラーと同程度での価格設定でした」(深瀬さん)

定価設定した14万8000円は、当時のステンレス製手曲げマフラーと同程度。つまり、ホイールもマフラーを替えるのと同じ感覚で買えたらいい、という発想だった。

「利益率など度外視。経営者となった僕の今の感覚では考えられません。お客さまが喜ぶもの、自分たちがほしいものを作りたいんだ、と。言ってしまえば現場のワガママですよね(笑)」(上田さん)

 

“価格破壊”を地でいった『タイプC』、そして傑作『タイプR』は現在も継続販売中だ

▲上が“価格破壊”でインパクトを与えたが、重量面で販売に苦労したゲイルスピードの処女作だった2002年デビューのタイプC。軽量を狙うならマグネシウム、アルミは鋳造の純正ホイールという概念がまだ強く残った頃だった。一方、手に持ってすぐに分かる、圧倒的な軽量性であっという間にカスタム界に浸透したのが下のタイプR(2004年発売。後述)。傑作というべきモデルだ。

タイプRの大成功でゲイルスピードブランドは定着した

そんな情熱の塊だった、ゲイルスピードの初代ホイールは、発売早々に壁にぶち当たることになる。
「パッと持った時の重量が純正ホイールとそう変わらない重さだったから、お客さまから“これ、なにがいいの?”って。全体バランスは精緻に作り込みましたから、ジャイロ効果の低減など優れた特長がありましたが、お客さまに響かない。それが悔しくて、タイプCを発売したその年には次のホイールの図面を書いていました」(深瀬さん)

深瀬さんは4輪アフターマーケットホイールメーカーの出身でバイク好きだったから、ゲイルスピード・ホイールの開発にも精力的に取り組んだ。苦労したのはホイールの重量を左右する、リムの肉厚。当時、4㎜が普通だった4輪車用と比して、バイク用は剛性、安全性を担保しながらどこまで薄くできるのか? そうして2004年に発売した“傑作”がタイプRで、この時、初代ホイールの名称はタイプCに変更された。

▲アクティブがHPで公開する、ゲイルスピードと純正品とを比較する概念図。ホイール総重量を左右するのは体積の大きいリム部で、ここの肉厚とスポーク部の剛性をいかに高次元でバランスさせるかがホイール作りキモなのだ。

「タイプCの5本スポークを10本に変え、スポークとリムの接合点を増やし強度を確保して、リムを軽量化でき、全体重量を抑えることができたんです」(深瀬さん)

「この時は僕も国内営業部に戻っていて、それまでのタイプCを“ジャイロ推し”の一辺倒で売っていましたから、タイプRの発売で苦労からようやく解放され、ホッとしたのを覚えています(笑)。でも、初期モデルの浸透をする間もなく、新製品を投入するなんて、しかも大物商品のホイールで。業界では異例のことですよね」(上田さん)

 

一貫して目指し続けるのは最高のストリートパーツ

上田さんや深瀬さんの思いは通じ、タイプRは売れに売れてゲイルスピードの名を確固とした。そしてこちらも当初から構想にあったという、『ゲイルスピードをフットワークパーツ・ブランドに育てる』という作業に進む。ただし、アクティブはハイパープロというパートナー・ブランドを持っているから、まずはブレーキまわりだ。

「ホイールの時もさんざん言われましたが、“元々、商社のアクティブがブレーキをやる?”、“本当に大丈夫なのか?”。そんな疑問は払拭しなければならない。ライダーの命を預かる重要パーツですから、ここも慎重に進めてきました。まずはマスターシリンダーから始めてブレーキディスク……。ブレーキキャリパーもリヤから。でも、そんな姿勢もマーケットに伝わったのでしょう。こちらは最初から受け入れてもらえました」(上田さん)

▲「後発のゲイルスピードは他にないアイデアを盛り込むのが必然で、苦労したところ」(深瀬さん)という製品開発。2014年発売のフロントブレーキディスクで言えば、アウター&インナーローターを接合部で、回転方向のガタを抑え熱膨張に対応するインサート加工がそれ。

▲鍛造ラジアルブレーキマスターVRC(2011年発売)にはボルト1本で脱着できるクイックリリースマウントのほか、タンクステーあるいはミラーホルダーが装着できるふたつのマウントも用意、ユーザーがニーズに合わせてチョイスできるものとした。この仕様は以降、GALE SPEEDのすべてのマスターシリンダーに継承する。

▲核心となるブレーキキャリパーも、リヤ側のラジアル2P品(2018年)から。その前にリヤマスターを先に発売する念の入れようだった。ブレーキメーカーではないアクティブの製品をマーケットに浸透させるために採られたこの戦略は、もちろん成功して今に至る。

「冒頭にワガママと括りましたが、お客さまに喜ばれるモノ作り、そして自分たちが作りたいモノを実現する。ゲイルスピードで培ったそんな精神は今も受け継がれています。コストも重要ですが、そればかり意識すると面白いものは生まれないと思っています。まあ、コストは気になりますが(笑)、そこは企業努力で埋めていきます。

そして当初から一貫した思想と言えば、ゲイルスピードは『ストリート向けのパーツブランド』だということ。モータースポーツで名をなしてストリートで売ろうとは思わない。逆にストリートで安心してお使いいただくために担保する高品質が、結果、モータースポーツでも使えるだけ。ここは声を大にして謳いたい」と上田さん。

「ホイールで言えば今、原点に立ち返った製品をもう一度、マーケットが驚くものを作ろう! っていう企画が動き出しています。それが“何か”はまだ言えませんが、近いうちにカタチになるはず。期待してください」とも言う。

既存の思考に捕らわれない、そしてターゲットはあくまでストリート。そんなアクティブとゲイルスピードから目が離せない。

 

時代やブーム、そしてニーズに合わせて変化するGALE SPEEDのホイールデザインを見る

2014 GALE SPEED Type-N

▲'80年代絶版車にも似合う、6本スポークによるオーセンティックなデザインを採用。17インチ向け各サイズのほか、Z1000Mk.llやZ1000Jに対応する18インチサイズ(F:2.75of3.00-18/R:4.00or4.50-18)もラインナップされる。ゲイルスピード中、18インチが選べるのは現在、このタイプNだけだ。

2018 GALE SPEED Type SB1

▲他のゲイルスピードホイールがA6061材を母材とするのに対し、「マグより軽く!」超々ジュラルミンを採用し徹底的な肉抜きを図ったのがタイプSB1だ。加速と制動、どちらの荷重も受け止める独自の10本スポークデザインを採用。ゲイルスピードのホイール史上、最軽量を誇る現在の中核モデルだ。

2019 GALE SPEED Type-E

▲初代5本スポークによるタイプRの後継モデルとして開発されたタイプEは、タイプRのイメージを受け継ぎつつ8本スポークに進化したモデル。リム形状も見直され、ライダーの疲労低減にも寄与する。ストリート向けに性能と価格のバランスを強く意識した、新ベーシックモデルといえるホイール。

ユーザーがほしいアイテムを実現する! 新アイテムも続々追加中だ

2023 GALE SPEED Type-J

▲2023年秋にデビューしたタイプJは、人気のネオクラシックモデルに似合うデザインとしながら'90年代絶版車も意識した意欲作。これまでのゲイルスピード各製品がスポーティ路線だったのに対し、タイプJではアルマイト後に切削されるコントラストカットも新採用するなど、ドレスアップ性も加味される。現在は17インチのみだが、売れ行き次第では18インチサイズの追加も検討中。もちろん同社の最新ノウハウを注ぎ込んだ軽量・高剛性も担保され、その性能も抜かりなしだ!

2019 GALE SPEED RADIAL MASTER VRE

▲VREはラジアルマスターの最上級モデル。ボディは鍛造ブランク材からの3D総削り出し。チタンゴールドのピボットピン採用など、最高峰の質感と性能を両立する。

2020 GALE SPEED FRONT AXIAL 4P CALIPER

▲ブレーキキャリパーは前出の「リア ラジアル2Pキャリパー」のデビュー以来、拡充が進む。'80年代車のカスタムにも馴染むアキシャルタイプは、同品の2年後となる2020年の発売だった。

2023 GALE SPEED BILLET CALIPERS

▲2023年に立ち上げられた『153 GARAGE』ブランド製品群と同時に発売された、新ジャンルを拓くミドルレンジ用モデル。どんな車種にもなじむシンプルデザインが魅力だ。

 

【協力】アクティブ TEL 0561-72-7011 〒470-0117愛知県日進市藤塚7丁目55番地 https://www.acv.co.jp/

※本企画はHeritage&Legends 2024年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
バックナンバーの購入は、https://handlmag.official.ec/ で!

 

WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。