バイクが示す不良予兆を知って対処しながらマイナスをプラスへ。CB-Fシリーズを手本に空冷旧車を対策・TTRモータース

オリジナルで対象物に優しいエンジン/キャブレター清浄メニューのRECS、数々の対策/リプロパーツにCB750Fリビルドエンジン、金属パーツへの機能塗装と、CB-F系を軸に幅広いメニューを持つTTRモータースのメニューは、まさにリフレッシュ。車両からの不良予兆を感じ取って、何をすべきか。その判断と対処法を、CB-Fを例に教えてもらおう。

ライダーが感じる音や見た目が最初のきっかけになる

絶版車、とくに旧車に欠かせないリフレッシュ。まずは空冷車の例として、CB-Fシリーズを多く扱うTTRモータースの車両を見てみよう。内容を聞いていけば、どうすれば快調に走らせられるかという指標となりそうだ。

▲TTRモータースと代表・林 一彰さん。CB-F/Rシリーズや6気筒CBXに強く、各種パーツも開発・販売する。同世代他モデルの中古車も扱うから、塗装も含め問い合わせを。

「“バリバリ伝説の車両がほしい”という依頼を最初にいただいて、まずFBカラーの車両を用意しました。当初はハンドルもアップだったりとノーマルに近い仕様で、まずCB-Fに慣れてもらいました。その後バリ伝仕様に近いセパハンにしたり、排気量も上げたりと内容も進化させています。

お付き合いも長くなって行く中で使い勝手等も聞いていきますし、何かを変える際にも一緒にまわりを見て、ネガを洗い出して解消する。電気系も一新したりと、こうなると何か起こっても分かりやすい感じですね」

▲T.T.R MOTORSのCB750Fで、イメージから手に入れた車両の内容を知った上で望むスタイルへ。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

この車両に手を入れ続けてきたTTR・林さんの言うように、リフレッシュの手が隅々まで入れられた見本とも言える仕上がり。キャブレターをFCRなどのレーシングキャブレターにしたり、ホイールほか足まわりなど、各部パーツを換えていくカスタムという手法でのリフレッシュは性能や機能もアップするから、もちろんあり。

では、そうした機能パーツ換装をしないケースではどうだろう。

「診ていく箇所も症状も膨大ですから、普通に乗っているとか、エンジンはかけるというような、分かりやすいところからお話しましょう。

普通に乗っているものならフロントブレーキをかけて異音が出ていないか。フロントフォークが沈んで止まる時に、コーンとかガコンとかいう音がヘッドパイプ付近から出ていれば、ステムベアリングの緩みや不良、グリス切れが考えられます。掃除してグリスアップして、適正に締め付けます。

まずこうした、バイクが見せる“何か変なことの最初のお知らせ”は感じ取って直したいですよね。ガタだったり動きの重いところだったり。そんな不良があれば、他の箇所もあまり良くないはずです。エンジンの調子が一定しないとかは、一番の例だと思います」

そう言って林さんは、用意していたキャブレターを作業台に載せてくれた。ひとつはクリーンナップされたもの、もうひとつはかなりヤレた状態のものだ。

 

旧車で一番のネックキャブや電気をまず直す

▲奥が状態の悪いもの。フロートが変色しジェット類はサビが噴きボディと固着。ボディもサビが分かる。こうなってしまうと動かすのも難しいが、TTRでは各部洗浄などで手前の新品状態にできる。ここはプロに任せた方がいいと分かるだろう。

「どちらもCB750Fの純正です。旧車でまずネックなのはキャブレターで、エンジンはかかるけど調子が悪いという時はここ。当店でお勧めするのは、まずワコーズ・フューエル1のような燃料添加剤を使うことです。入れて調子を見て、改善されればいいです。

そうでなければ分解・清掃となります。CB-FのVB型キャブは部品点数が多い上に専用工具も必要。内部パーツも出ませんでしたから、CB-SF系純正流用やレーシングキャブレターに換装していました。それがキースターさんから燃調キットほかが発売されたので、これでオーバーホールできるようになりました。

▲キースター製CB-Fキャブレターインナーパーツ。「燃調キット」はジェット類/ニードルバルブ/Oリング/チャンバーガスケットなどの1気筒分セットでエアカットバルブ同梱の有無のほか、「オーバーフローパイプO/Hセット」(4気筒分、治具同梱)、「フロートバルブ バルブシート蘇生キット」も用意される。

ただ、特にCB-Fのキャブは普通の人はバラさない方がいいですからショップに出すことをお勧めします。この、プロに任せるという見極めも旧車のポイントです」

ついエンジン本体と考えがちなところだが、適正な混合気が行っているかを考える。TTRではキャブレター/エンジン清掃メニューのRECSも用意し、本体側もリフレッシュできる。さらに先のキット類で内部再生も可能になる。

▲TTRが用意するRECS(リアル・エンジン・クリーン・システム)の作業後のキャブレター。ここまでリフレッシュできる。

難しいと林さんが言うのは、フロートバルブのバルブシート蘇生キットやオーバーフローパイプO/Hセットの組み方で、つい深く打ったり、4気筒揃わない(モンキーやスーパーカブで慣れているとしても難しいそうだ)で燃料が漏れるなどの点。一見大丈夫そうに見えるパイプにも、普通ではまず分からないレベルの割れがあるという。こうなると経験。そして、健全なもの(ここでは4気筒とも正常なキャブレターの各パーツ)と比較できる眼が要る。

そうした理由からもプロへの依頼がいいとのこと。ところで最初に使った清浄剤は、エンジン好調にまで至らなくても各パーツの汚れを多少なりとも取ってくれるから、キャブ分解時の作業を楽にしてくれるプラスに働いてくる。

次いで、旧車ではおなじみと言える電気系に注目しておきたい。

「ハーネスやスイッチ類、点火系などを新しくした方がいいのは当然として、ピックアップコイルや発電系に注目してほしいですね。

CB-F用にはウオタニさんがピックアップASSYを発売しました。クランクの左に付いて点火時期を検知するパルサージェネレーター。純正では廃番で、ここにパルサーコイルがふたつ付くのですが壊れてても分かりにくい。それが新品に出来て、正しいタイミングで確実な点火ができます。

▲エンジン左、パルサージェネレーターカバー内に入るパルサージェネレーター(さらにこの内側にアドバンサーとスターターギヤが入る別スペースがある)。

配線がカバーの外に出る部分2カ所に付く密閉用ゴム2点も新作。これでパルサーを修理したけどゴムはそのままなのでオイルがにじみ出る……ということもなくなります。見た目キープもプラスされるわけで、いいと思います」

TTRでも対策パーツ製作を進めていたけれど、電気系の専門がやるのならそちらでOK、SP2ユニットとも併用しようという判断。先にも言ったように、個人で作業する時に陥りやすいネガを排する判断も見習いたいところだ。

エンジンについても、動く動かないや開ける開けないの判断が要る。今回は動く方を対象にしたが、動かない場合でもCB750FならTTRがリビルトエンジンを用意しているから、そのまま好調なユニットに換えられる。直す場合にも、内部が参考になるだろう。

▲TTRで用意した販売用スペシャルエンジン。750F用をRECS処理しワイセコφ65㎜ピストンでの823㏄化やブラッククロームでのガンコート仕上げ。ミッション分解組み立てにクランクメタル合わせ、TTRジェネレーターキットにウオタニパルスジェネレーター&SP2点火キット、チタンボルト等を組み合わせた。

もうひとつ、機能塗装も見逃せない。TTRではパウダーコートにガンコート、セラミック塗装を用意し、部分で使い分ける。CB-Fで純正キープをしたいと思うコムスターホイールも、純正アルマイトに近い色を再現できる。

外装を含めて再生した部分にはコーティングを施すのが一般的となったが、林さんはここにも、一度下地をきれいにして、汚れを巻き込まないでコーティングしようというアイデアを加えてくれた。これらを経て、冒頭の車両のようなきれいさが維持できる。

まずは予兆を見つける。CB-FならばTTRに「CB検査」メニューが用意され、それで状態を判断できる。つまり、どんなリフレッシュを施せばいいかもより明確になる。もちろんプロの手を借りてもいいし、それも判断のひとつ。各作業にも的確な判断をして臨む。他の空冷旧車にも応用できるから、ぜひ参考にしてみたい。

 

好不調の鍵を握るキャブレターをまず観察。怪しければ迷わずプロに。

エンジンがかかる車両の場合、その調子はエンジン本体よりも補機類に左右されることが多い。添加剤で予備的に調子の上がり下がりを見て内部に進むが、基本はプロに任せるべき。


CB750FノーマルVB52キャブレターの外観。


フロート室も上写真のものはサビが多く、詰まりや不調につながることがよく分かる。中から伸びた真ちゅう製のオーバーフローパイプは大丈夫そうに見えても縦に分かりにくい裂け目が出たりするので不調の場合はとにかく疑う。


ジェット類の比較。上は穴が目詰まりし、外側やねじ部も工具が使いづらい状態になっている。復調を狙うなら新品交換必須だが純正はなく、キースター製品の登場で何とかなった(この状態ではボディをきれいにすることも必須だ)フロートバルブも同様だ。


エンジンがかかるのならまず入れてみてと林さんが言う燃料添加剤。TTRではワコーズ・フューエル1を使う。燃焼室内まで燃料系の清掃が行え、軽微な不調なら改善の可能性大。重症でも以後の清掃は楽になる。


キースター製CB-Fキャブレターインナーパーツ。ただし、特にCB-Fのキャブは普通の人はバラさないでショップに任せるのが無難だ。


キャブレターボディが劣化した場合にも方法はある。写真はTTRが’20年春から用意するRECS(リアル・エンジン・クリーン・システム)の作業後。ブラストによる洗浄で、汚れを5種類に分類し、各汚れに最適な方法で汚れを落とす。作業と同時にコーティングが行われ、ブラスト後に対象物を専用溶剤に漬けることで約30秒という短時間でブラスト粒子も消滅し、すぐ組み立てに移れる。コンスタントに作業依頼が入るという。

 

良好な発電・通電・作動を考えたい電気系は新品/強化品への交換を

吸気系に次いで考えたいのは電気系。しっかり発電されているか、電気が伝わっているか。各部品が作動しているのか。配線の劣化は振動に弱くなることでもあるから、新品や強化品への交換を。


写真はASウオタニのCB-F用ピックアップASSYのアップ。クランクの角度を検知するピックアップコイル(写真の四角いパーツ。2個ある)がダメになることも多く、純正廃番。


ASウオタニのCB-F用ピックアップASSY(写真左。CB1100/900/750F適合。右は純正)を使えば新品にして点火時期を正しくでる。


カバーから配線を出す部分のゴム2点も新品になり(中央と右。純正は黒)、オイルにじみ等の副次的劣化も避けられる。


クランク右側の発電系もアップデートを。TTRで用意する「CB-F/R専用ジェネレーターキット」はステーターコイル(写真左上、アルミ削り出しカバーも)、フライホイール(同上)を現代化し、レギュレーターもMOS-FETタイプ(同右)として発電量と信頼性を高める。その一方でトップカバー(同下)はCB-Fの時代感に合うデザインの鋳造とし、リフレッシュにも向いた構成を採る。


上写真の左はノーマル、中央はTTR製のステーターコイルの比較。TTR製(写真は裏側)は重い純正から大径/軽量化して発電容量を増し安定させる。上写真右の鋳造カバーはジェネレーターカバー、パルサージェネレーターカバー(下写真)のどちらでも装着できる。TTR文字の周囲の黒はガンコート仕上げだ。

 

エンジンはCB750FならばTTRのリビルドエンジンへの積み替えもあり

エンジン本体はさまざまな手法があるが、TTRではCB750Fに対してリフレッシュ&組み立て済みのリビルドエンジンを用意する。積み替えも増えたと言い、内容はそのまま参考に出来る。


エンジンはTTRのリビルトエンジン(CB750Fのみ設定)に載せ替えるのもありだ。写真2点はその例で「スタンダード」ならピストン/ピストンリング、ガスケット一式/シール類.テンショナー一式/ベアリング一式/カムチェーン一式、クランクメタル/コンロッドメタルを交換。バルブシートカット&リフェースも行い、ガンコートシルバーorブラック仕上げと、お得な内容。


内部だけでなく外観リフレッシュ&維持用オリジナルパーツも続々。上は「CB750Fマフラーフランジ」で、特殊な形状のフランジを独自に鋳造で再現。下は「セルモーターカバー」でカーボン製。軽さも嬉しくなる。

 

サビは落とし、劣化を防ぐ機能塗装を施した上でキープコンディションへ

足まわりを始め、純正または今付いているパーツにこだわりがある。錆が出ていれば落とし、それ以上の進行を食い止め、汚れも防ぐ。そんな機能塗装もあるし、機能を維持するメンテナンスもある。


ブラッククロームでガンコート塗装されたエンジン。HONDAの赤、MADE IN JAPANの金ともガンコート仕上げ。同一塗装により、耐薬品性(種類が異なると文字だけ溶けるなどある)や耐候性を同じにする処理でもある。


CB-F/R純正で非分解構造のコムスターホイールもパウダーコート塗装で純正新品に近い状態が再現できる(オーダーカラーも可能)。貫通ボルトが入るブレーキディスクマウント穴も別色で処理。リム/スポーク/スポーク端面で色の異なるFB用裏コムスターでも純正を再現可能。


マフラーにはセラミック塗装(上写真)やガンコート塗装を行い、耐汚れ性や放熱性(ガンコートの場合)を高める機能を加える。下はTTR自社ブースでの塗装作業例。ガンコートはじめ色も多く用意し、調色も可能。


塗装後の維持にはコーティング剤の使用(写真下、TTRではワコーズ・バリアスコートを推奨)が効果的。ここで施工前に対象面にホコリや汚れを巻き込まないように下地をきれいに作ることが良く、同店では写真上のワコーズ・リフレッシュコートを使い、その上でコーティングする。


TTRがCB-Fの車両診断用に用意する「あなたのCB健康診断」シート。24の設問に従って○×で答えていく(無料)と、TTRは壊れや、転倒に対する車両の状態を判断する。どこに手を入れるべきかや深刻度も分かり、さらに5万5000円で必要な点検を受けることもできる。まさにリフレッシュの参考だ。

 

【協力】T.T.Rモータース TEL048-925-8655 〒340-0017埼玉県草加市吉町4-3-28 https://bike-ttrm.com

※本企画はHeritage&Legends 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。