【SPECIAL MODEL IMPRESSION】
ACTIVE Z650RS
ミドルパラツインならではのスリムさとヒラヒラ感を堪能!!

ネオクラシックモデルを含めた現行ネイキッドのカスタムでは、目にする機会が少ないセパレートハンドルと前後18インチホイール。あえてそれらを採用した、アクティブ/153ガレージブランドのZ650RSはノーマルの潜在能力をきっちり引き出す、軽快でスポーティな特性を実現していた。2輪ジャーナリスト・中村友彦がその詳細をレポートする。

153ガレージのカフェレーサーは乗り味だけではなく、ルックスも軽快だ!

潜在能力を引き出す153ガレージの着眼点

’22年から販売が始まったZ650RSには好感を抱いている。このバイクの何がいいのかと問われれば、車格の小ささと車重の軽さのおかげで、気軽に付き合えること。けれど、兄貴分のZ900RSと同様に、往年のZ1/2を彷彿させるルックスを纏うものの、エンジンが4気筒ではないからか、日本でのZ650RSの人気はいまひとつ盛り上がっていない。

けれど、アクティブが新ブランド・153ガレージのデモバイクとして製作したZ650RSを体感して、そんな認識を改められた。

▲試乗に立ち会ってくれたアクティブのふたり。左が全体のまとめを担当した福田さんで、中央はハイパープロ担当の宇田さん。なお前後ホイール/タイヤの18インチ化は福田さんのアイデアだそうで、予想以上の好感触が得られたという。

何と言っても、ライディングポジション関連パーツや足まわりなどを変更したこのZ650RSは、これぞミドルツイン! と言いたくなる、スリムさとヒラヒラ感を堪能させてくれるのだから。これに乗ると、ノーマルはベーシックバイクとしての汎用性を重視する一方で、ミドルツインならではの魅力を追求し切れていないから、人気がいまひとつ盛り上がらないのかも? とも思わされるのだ。

さて、本題に入る前に大前提の話をすると、当記事で紹介するカフェレーサー仕様のZ650RSは、日本を代表するパーツメーカー/サプライヤーのアクティブが、ネオクラシックモデル用カスタムのブランドとして立ち上げた、153ガレージのデモ車の第2弾である(第1弾はGB350S)。

▲ノーマルと比較すると、153ガレージのデモ車はスリムでコンパクトだ。その印象には、セパハンとバックステップに加えて、ショートタイプのフロントフェンダーやリヤフェンダーレスキットも大いに貢献しているのだろう。

コントロール性が抜群のブレーキや上質な乗り心地を実現した前後サスなど(フロントブレーキマスターと前後キャリパーはゲイルスピードで、フォークスプリングとリヤショックはハイパープロ)、この車両にはいろいろなポイントがあるけれど、試乗で最も驚かされたのは、153ガレージのセパハンとバックステップ、そしてゲイルスピードの前後18インチホイール(TYPE-N)を採用したことによる、乗り味の劇的な変化だった。

バックステップはさておき、セパハンと前後18インチホイールの装着は、ネオクラシックモデルを含めた現行車は、主流とは言えない選択だろう。

 

前後輪の大径/細身化でハンドリングが激変?

まず、ライポジ関連部品だが、ノーマルのままでも悪いとは思わない。けれど、セパハン&バックステップに置換したこのZ650RSを走らせると、ミドルツインならではのスリムさとコンパクトさが際立って感じられる。ハンドルをフォークに直接装着したこと、そのハンドルとのバランスを考えた位置にバーを移動して、ステップ全体の剛性を大幅に高めたことで、ライダーの操作に対する反応がすこぶる良好なのだ。

▲前後ホイール/タイヤの大径化によって、重心位置はノーマルより高くなっている。詳細はこちらのグッドルッキンページでもご紹介!

そして前後ホイール/タイヤの大径化は、ハンドリングに多大な影響を及ぼしていた。一般に、前後17インチで開発された現代のオンロードバイクに、前後18インチを装着すると、重ったるいとか曲がりづらいなどの印象を持ちやすいが、このバイクにはそんな気配が微塵もない。それどころか、タイヤ幅が細く(純正のF:120/70ZR17・R:160/60ZR17に対して、試乗車はF:110/80R18・R:140/70R18)、車高が高く(タイヤ外径はF:約45mm、R:約20mm大きい)、ホイール重量が軽減されたこと(F:0.7kg、R:1.76kg軽量)で、車体の動きはノーマルより格段に軽快。それでいて、大径の前後輪が絶妙のジャイロ効果を発揮して、安定性不足などまったく感じない。

ライダーの操作に対する反応が良好な上に車体の動きが軽快になったのだから、峠道でのスポーツラインディングが楽しくないわけがない。中でもコーナー前半のフィーリングはノーマルとは別物で、スパッと進入してクルッと向きが変わるキレ味抜群の挙動は、ヤミツキになる気持ち良さだ。

そんなわけで今回の試乗を通して、セパハンとバックステップの採用、そして前後ホイール/タイヤの大径&スリム化が、Z650RSの美点を引き立たせるという意味で、有効な手法だと感じたが、改めて考えてみると、それはミドルツインに限らない話かもしれない。例えば兄貴分のZ900RSやホンダCB-Rシリーズ、ヤマハXSRにスズキKATANAなど、他のネオクラシックモデルでも同様の感覚が得られるのではないだろうか。いずれにしても153ガレージの手法に、既存の王道や定番とは一線を画する、カスタムの新しい可能性を感じたのだ。

 

既存の王道や定番とは異なるカスタムの新しい可能性を実感!


上面がすっきりとフラットな、153ガレージのトップブリッジ&セパレートハンドルキットには、ショートタイプのスロットル/クラッチケーブルやブレーキホースも含まれる。価格は7万7000円。ハイパープロのプリロードアジャスターも装着する。


鍛造ボディのラジアルマスターとワイヤークラッチホルダーはゲイルスピード。


バックステップは、同社製セパハンとのバランスと、ネオクラシックモデルに似合うことを考慮しての1ポジション式で、バーの位置はノーマルに対して38mm後方/53mm上方に移動。ホールド感とシフト/リヤブレーキのタッチは非常に良好だった。リヤブレーキホースとスイッチは純正がそのまま使える。


リヤショックとフォークスプリング、オイルはハイパープロのストリートボックス。


フロント用ブレーキホースのセパレーターはアクティブのオリジナルパーツだ。


ショートタイプのドライカーボンフロントフェンダーはNEXRAY。セミグロスとスモークの2タイプが用意される。リヤフェンダーレスキットはアクティブの定番品。


F:2.75×18・R:4.00×18のアルミ鍛造ホイールはゲイルスピードTYPE-N(ノーマルは3.50×17・4.50×17だ)。ツーリング指向のラジアルタイヤはブリヂストンT32を選択する。2ピース構造のビレットブレーキキャリパーもゲイルスピードブランドだ。

【協力】協力:アクティブ TEL0561-72-7011 〒470-0117愛知県日進市藤塚7丁目55番地 htttp://www.acv.co.jp/

※本企画はHeritage&Legends 2023年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

中村友彦

二輪雑誌編集部員を経て独立し、現在フリーのモータージャーナリストとして活動中。クラシックバイクから最新モデルまでジャンルや新旧を問わず乗りこなし解説する。カスタムやレースにも深く興味を持ち、サンデーレースにも参戦する。