
夏の愛車整備はココに注目・レッドモーター【後編】
気持ちよく止まるために気を遣いたいブレーキパート
ブレーキレバーを握ることでマスターシリンダーに起きる油圧。これがキャリパー内のピストンを押し出して、先にある摩材=ブレーキパッドでブレーキディスクを挟んでホイールの回転力を熱に変え、止める。車体の下側にあること、パッドとディスクが削れることで微細な粉(ダスト)が次々出る、高熱になるなど、条件は厳しい部分だ。
今回は通常より1ステップ深掘りして、中村さんのチェック&清掃をじっくり見せてもらった。

▲レッドモーターの中村さん。レッドモーターのショップ業務はもちろん、JD-STERの事務局も務め大忙しの毎日だ。
「キャリパーが比較的きれいならばこの作業の手順と同じようにして水洗いという方法もあります。今回の車両はキャリパーピストンとパッドピンにダストが目に見えて付いていますから、それを取るようにブラシを使ってドライで進めていきます」と中村さん。
分解も清掃も、そして再組み付けについてもノウハウやツールが必要な箇所なので、手順、そして効果=ピストンがきれいに出れば効きも操作感も高まるということを理解して、プロに頼んだ方が好結果が得られる部分でもある。ここが決まると気持ちも良くなる。
3.ブレーキ周りの疲れも入念にチェック
ブレーキまわりも場所として汚れやすく、熱が加わることでブレーキダストがこびりつきやすくなったりと厳しい箇所。安全に止まれるように確認と清掃していくのがいい。
■ブレーキまわり/汚れはそのまま疲労だからきれいにして動きも見た目も良くする。

ここでの作業で使った道具。上は真鍮ブラシ、中はシリコングリス(ブレーキグリス)、下はプライヤ(パッドピンとβピンを掴んだ)。


フロントフォークからフロントキャリパーを外す。ここからの作業時は大ケガにつながるので必要時以外フロントレバーを握らないこと。

外したキャリパー。内側に全体的にブレーキダストが溜まっていることが分かる。
■ブレーキまわり/キャリパーを外してブレーキパッドの残量パッドピンの汚れを確認。

小指で指示しているのはキャリパーピストンの先端周部。全体的に多めにブレーキダストが付着している。

横から見てもピストンの表面でなくダストと分かる。反対側にはパッドのバックプレート由来と思われるサビも見られる。

まずは異物侵入を防ぎパッドを支持するパッドスプリングを外す。ブレーキパッドを保持するパッドピンのβピンを抜いてパッドピン自体も横に引き抜く。

ピンの表面は汚れで段ができていた。

パッドスプリングのほうは比較的きれいだった。

交換前提だが再使用の際には向きにも注意。ブレーキパッドは簡単に外れるが、バックプレートには赤サビも。

指で挟んでいるところにパッドピンが入り、パッドはここでピンの上をスライドする。親指の先はピストンの当たる部分。
■ブレーキまわり/こびりついた汚れは落とした上で再組み付け。プロに頼むのがベターなパート

ここからは清掃に移る。パッドピンの汚れはしぶといので真鍮ブラシで磨きあげる。

段も取れてスムーズになった。ブレーキパッドは残量(厚み)と荒れを確認。

ディスクに触れる面は荒れも傷もなく残量も十分だが、パッド周囲は汚れ、バックプレートに汚れ、サビがかなりある。

バックプレートの汚れ=ダストとサビも真鍮ブラシで落としていく。


キャリパー内側も見えている部分から汚れ落とし。


ある程度進んだらほんの少しずつブレーキレバーを握り、ピストンを少し出して清掃を続ける。

この時レバーを握り過ぎるとピストンが外れたり、指を挟むこともあるので注意を払おう。キャリパーピストンや周辺がきれいになったら、落としたダストやサビはパーツクリーナーを使って拭き取る。他のピストンも同様に出してきれいに。このくらいまで出れば十分で、ここより内側は汚れはまずない。


︎清掃が済んだら再組み付け。シリコングリスを少量取り、きれいになったキャリパーピストンの周囲に薄く塗布する。

その上でピストンを押し戻す。斜めに戻してしまいがちなので、これを避けるために専用工具(ディスクブレーキセパレーター)を使うといい。

ピストンを押し戻したら次はパッド。パッドピン周囲にブレーキグリスを薄く塗る。

きれいにしたパッドを置き、パッドスプリングを元のように置いた上で、パッドピンをキャリパーに差す。


βピンを差してキャリパーの組み上げは完成。後はフロントフォークに組むだけだ。
スムーズに動くことを目指せば気持ちもいい
スムーズに各部が動いてくれる。これはバイクが思ったように動く、動かせるということで、ライダーとしても疲れにくくなる。スムーズに動かすためには、その逆=動きを重くする抵抗、フリクションを減らしていく。
ここでは中村さんに、各可動部の動きを担うベアリングのチェックを見せてもらった。ホイールベアリングは静止状態で、横からホイール上下を掴んで揺する、また回転させてみることでガタがあれば不良と分かる。その場合はベアリング交換でスムーズさを取り戻す。レッドモーターではセラミックボールを使ったホイールベアリングも扱っている。
ボールの真円度が高く耐荷重性もあり、認可も取れている製品で、「装着車を緩い坂道に止めると自然に動き出すくらい(笑)抵抗がありません。ドラッグレースでもマフラーよりも先にこれを換えるくらい重要アイテムです」と中村さんは効能を教えてくれる。
ステムベアリングもスムーズな動きを重視して調整する。さらに、注油も重要。ここまでに紹介してきた整備の多くも、作業の結果、そんなフリクションを減らして理想的な動きを取り戻すと言って過言ではない。
こうした作業を知ること。プロに任せて、その効果を知るのもいい。夏の疲れを吹き飛ばして楽しく乗ろう!
4.可動部の疲れ:フリクションを減らしていこう
可動部に出てくるフリクション=抵抗は、操作の力も不要に増えるしエネルギーも損になる。ライダーにも疲労を呼びやすい。それらを見つけ、減らせば車両も乗り手も疲れが減ることになる。
■ベアリング(ステム、ホイール)/気が付かないうちに出てくるガタを確認しよう。
ステアリングステムはハンドルを切る&ブレーキング時のコツコツを見つける

フレーム前端、ステアリングヘッドの上(上の指示部)、下に入るステムベアリング。形式もいろいろあるが、まずはガタがなくスムーズに動くかを確認したい。
ピッチング方向はフロントブレーキをかけた時に

矢印のような前後に動く=ピッチング方向は、すーっとバイクを押してフロントブレーキをかけて確認。

上写真のようにトップブリッジセンターに手を当て、ブレーキをかけてコツン! という感触があったらガタあり、要調整だ。
スラスト方向はハンドルを左右に切ってスムーズさを

ハンドルを左右に切ってみて、引っかかりやゴツゴツした感触がないこと。調整に関してはプロに任せる方が好結果が出るのでそちらを勧めたい。
上と下を押し引きし左右方向のガタ確認

ホイールベアリングの横方向のガタを調べる中村さん。リヤをスタンドで持ち上げた上で横からホイールの上下を掴み、矢印のように揺すってみる。ベアリングに破損等があればガタとしての手応えが伝わる。ガタはロスだと考えていいから交換だ。
タイヤを回して回転方向のガタを見る

ホイールを指定通りに締め付けて効果を発揮するベアリング。だから回転時にガタがあるのは破損や内部ボールの摩耗があると判断できる。これはスムーズな回転を妨げるロスだ。静止状態で手で回してチェックする。この時点での軽さにはこだわらなくていい。

レッドモーターで扱っているホイール用セラミックベアリング。内部のボールがセラミック製で真円度が高く長寿命、シールタイプで高耐荷重、認可品。ドラッグレースの大パワーにも十分耐えてくれるため人気の製品でもある。詳細はレッドモーターへ問い合わせを。
■各部注油/可動部の軸への注油も定期的に。気が付きにくい箇所もある。



上からクラッチレバーピボット、フロントブレーキレバーピボット、ステップバーピボットに注油しているところ。ワコーズ・ラスペネ等の潤滑剤を注し、余分は拭き取る。可動部のピボット=軸がスムーズならば操作もスムーズで疲れにくくなる。動きにくくなったら何かおかしいということも検知できる。

タンクまわりでは、エアブリーダーの詰まりも注意と中村さん。汚れが溜まると内部のワンウェイバルブが機能せず、エンジンをかけてもすぐ止まるような謎不調を招く。この周囲にあるオーバーフロー用穴も詰まりや腐食に注意を。

しっかりチェックと整備で快調に走れますように!
>>>前編はこちら!>>>
【協力】レッドモーター TEL03-3915-0953 〒114-0024東京都北区西ケ原4-6-2 http://redmotor.com
※本稿で紹介している作業は、道路運送車両法により、ご自身が車両使用者である場合以外には認証指定工場で行わないといけないものも含まれます。ご注意ください。
※ブレーキキャリパーの脱着やフロントフォークの脱着は、ご自身が車両使用者である場合以外には認証指定工場で行う必要があります。
※本企画はHeritage&Legends 2022年8月号に掲載された記事を再編集したものです。
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