既成概念を超える魅力を放ち続ける名機を楽しむ・OIL COOLED MODELS HISTORY Part2
レプリカは水冷に譲り後期油冷はネイキッドとの親和性を新たに得る
’90年代に入ってGSX-Rシリーズが水冷化した後、油冷には新たな道が開けた。ネイキッドモデルだ。
他社で用意されたのは空冷が主だったが、スズキでは〝らしい〟エンジンとして油冷が選ばれた。レースの機能をストリートでと作られた油冷のメリットはここでも生きた。
最終的には排出ガスと騒音の規制により、その歴史を閉じることになるが、現存する車両はまだ楽しんでいけるはずだ。
▲SACS(SUZUKI ADVANCED COOLONG SYSTEM)/水冷で必要な冷却水やウォーターポンプに冷却水路などを使わないことで軽くシンプルな構造にし、空冷よりも熱安定性を高める。そのためにエンジンに元からあるもの=エンジンオイルやオイルラインを積極的なエンジン冷却に使う。それが初代油冷の考えだった。写真は左右とも初期GSX-R750の油冷解説図。【右写真】奥が前で、エンジン背面のオイルラインからシリンダーヘッドカバーにオイルを上げ、カバー内の通路から各気筒の燃焼室裏(ヘッド上側)に大量にオイルを吹き付ける。このことで熱が溜まった燃焼室裏の熱境界層を破壊し熱を奪い、オイルはオイルパンに回収された後にオイルクーラーで冷やされる。/【左写真】オレンジ色がオイルの通路で、ピストンの上に見えるのが燃焼室裏のオイル溜まり。燃焼室から伝わる熱が溜まったオイル部分(熱境界層)を上からのオイル噴射によってかき混ぜ=破壊し、熱上昇を抑える。オイルは冷却を行いつつエンジン全体を回り、潤滑も行う。図にはないがピストン裏側にも他のエンジン同様にオイル噴射が行われている。
’90年代に入ってネイキッドモデルとして新たな道を開く
GSF1200(1996-2000)
’80年代後半から実用的なカウルレスモデルやツアラーに転用された油冷だが、’90年代のネイキッドブームに現れたGSF1200とハーフカウル装備車Sで再び脚光を浴びる。後期型1100を1mmボア拡大した1156㏄を鋼管ダブルクレードルフレームに積み、スポーツ色を強く見せた。
INAZUMA1200(1999-2000)
ショートホイールベース+油冷パワーで過激感もあったGSFに続いた油冷ネイキッドは’98年からのイナズマ1200。780mmの低シート高やBST36→BSR32+TPSとしたキャブなどでマイルド化を計り、スタイルもオーソドックス。誰にでも扱いやすい実用的な1台として展開した。
GS1200SS(2001-2003)
イナズマ1200のフレームを補強し、φ79mmボアのバンディットベースエンジンを搭載。’80年8耐優勝のGS1000Rをモチーフとした外装を架装した2本サスモデル、GS1200SS。当初ブラックから2年目に青×白、3年目に黒×赤と、往年のスズキレーサーモチーフカラーを展開する。
Bandit1200(上)/Bandit1200S(下)(2001-2005)
油冷モノサスネイキッドのGSFをモデルチェンジしたのが2001年のバンディット1200とハーフカウル仕様の1200S。鋼管ダブルクレードルのフレームワークを直線基調としホイールベースは短縮、キャブと点火を変更することで元気良さを維持しつつも扱いやすさを高めていた。
Bandit1200(上)/Bandit1200S(下)(2006-2007)
バンディット1200/Sは、’06年にモデルチェンジしヘッドライトまわり等外装(Sではカウルも)を変更。スイングアームも45mm伸ばし、シートも2段調整式とする。同年後期には’07年型=ファイナルモデルとして特別仕様車(写真、両車とも)を設定した。
従来型油冷を発展させた上でFIと組み合わせた最終型
GSX1400(2001-2008)
GSF1200系油冷をベースにボア拡大/ヘッドまわり新作で1401㏄とし、ツインフラップのSDTVを持つFIを組み合わせたネイキッドがGSX1400。排気系は左右出しから’05年にメガホンタイプ集合となり(写真上の黒車両は同年の特別仕様車)、’08年型でスペシャルエディション(写真下)を設定した。この’08GSX1400が、GSX-R系油冷の最終型となる。
油冷GSX-Rシリーズを紹介したPart1はコチラ!
※本企画はHeritage&Legends 2021年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
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