しっかり手を入れれば長く乗れる油冷機という見本にも
良好なコンディションの油冷GSX-R1100/750を入手する。他の同世代=’80年代名車同様に、それは時が過ぎていくごとに難しくなっている。そのGSX-R750/1100を軸に油冷とGSX-Rシリーズに力を入れるm-techの松本さんは、毎回のようにそう説明してくれる。初代油冷となるGSX-R750は’85年登場。同じくGSX-R1100は’86年登場で、もはや40年クラスの履歴。人気こそ高まっているが、この年数、そして当時は試験場での一発試験でしか限定解除(現大型二輪免許)への道もなかったこともあり、国内での残存車両は少ない。そうした事情もあって、今後はさらに価格が高まることも予想されるという。
m-techでは良好な油冷GSX-Rを探して入庫し、各部整備を行って良質な中古車両として販売しているが、この車両も似た背景を持つ1台。状態の良かった(外装やフレーム、エンジンまわりはストックのままだ)車両を現オーナーが購入。足まわりとブレーキを中心に現代パーツを使って仕立て直したというものだ。参考までにこの車両のプライス(購入当時)は、車両代220万円+追加カスタムにかかった費用で収まったが「これほど状態の良い中古車は、まず見なくなった」とも松本さん。
新車価格(参考までに初代=’85GSX-R750の国内新車価格は78万円)から考えると、今取り引きされる値段を聞いて驚く向きも多いが、年式のことや車両数、良好な状態の中古車だということも考えればこれは当たり前と言ってもいい時代になっている。ただ形があればいいのでなく、油冷GSX-Rを本気で入手し、これから乗って楽しむのなら、ユーザーも覚悟を持って向き合うべき。そして今の環境に合うようにきちんと手を入れるべきという時代になっているからだ。ただ、その覚悟をもって1度きちんと手を入れれば(これは不可欠)、頑丈さも持ち味になる油冷機は、この先も10年20年と長く楽しめるというメリットがあるともいう見解をm-techでは持っている。
そのためにm-techでは今急速に廃番化や高騰化の進む油冷GSX-R用純正部品を同等レベル以上の品質で置換できるリプレイスパーツの開発・販売に取り組んでいる。定期的に換えたいスロットルケーブルやメインハーネスなどはその一部。KEYENCE製3次元測定器やStratasys製3Dプリンターを導入してのリバースエンジニアリングによるリプレイスパーツ開発も進む。耐油・耐熱、絶縁性に優れた樹脂素材の選定でハーネス用コネクターや、タンクラバー類が目下のターゲットだ。これらによって、油冷モデルは好調を維持しやすくなるし、乗り続ける安心も生まれる。
この車両にもいずれそれらが使われるようになる時も来るだろうが、良好な状態をまずは作る、もしくはm-techのようなプロの目を通して今の状態を知ること。m-techでは「油冷SPL納整」という油冷GSX-Rメンテナンスメニューも設けているから、それを受けるのもいい。この車両はそんなメニューを持つ目から見ても走る、曲がる、止まるを十分にこなせるとした好例となっているわけだ。
Detailed Description詳細説明
外装はオーナーへの引き渡し前にすべて磨き直し済み。当初から装着されていた社外品のヘッドライトカバーはメーカー不明で、ライト自体もLED化されている。シングルシートカウルは純正オプションだが新車時の艶を失っていない。
経年にともなう加水分解で劣化し崩壊してしまうメータースポンジの状態もこの車両は良好で交換の必要はなかった。トップブリッジ下にステアリングダンパーを収めてある。
フロントブレーキマスター&クラッチマスターはブレンボRCSでアクティブのハイスロKITも装着される。SUS304製バーエンドはm-techオリジナル。
フレームおよび1052ccの油冷DOHC4バルブ直4エンジンは状態が良く、ストックで使用。キャブレターはヨシムラTMR-MJNのφ38mm(m-techはヨシムラテクニカルショップ)をDNAエアフィルター仕様で装着、マフラーはデッドストックのヨシムラ・サイクロンを組み合わせた。
フロントフォークは純正同径φ41mmのアドバンテージSHOWAに置換されている。フロントブレーキはブレンボ・アキシャル4Pキャリパー+サンスター・ディスクの組み合わせで制動力も確保される。
対向2ピストンキャリパーによるリヤブレーキはGSX-R100純正。ブレーキラインは前後ともグッドリッジ・ステンレスメッシュに換装済みだ。
前後ホイールは6本スポークのゲイルスピードTYPE-Nで2.75-18/4.50-18サイズ。タイヤはブリヂストンT32で110/80ZR18・160/60ZR18サイズをチョイス。ドライブチェーンはDID・530VX3を使う。